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モーガン・スパーロックの 『JAIL』

先週からWOWOWで始まった、モーガン・スパーロックの『30DAYS』第2シリーズ。
初日の「刑務所で30日間」は、スパーロック自らが入所して服役生活を体験するという、これまた究極の30日間なのです。
麻薬取り締まりが強化され、表面的には治安が向上したアメリカ。しかし、投獄者が激増したことにより、刑務所はどこも超満員。我々が映画の中でしか知らない塀の中の世界とはいかに!?
禁断の扉が今、開かれようとしています。(笑)
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一度だけ留置所に入れられた、という前科を持つスパーロック。しかし、彼にとって、それだけでも充分恐怖の体験でした。それが今度は極道者どもがすし詰め状態になっている刑務所、と言えばなおさらビビります。
「襲われるかも知れない」というジョークとも弱音ともつかない発言に、「こんな企画はやめて」と哀願する婚約者(今は妻ですが)のアレックス。
しかし、スパーロックはNYを離れ、ヴァージニア州はリッチモンドへ飛び立ちます。刑務所名は伏せられていますが、地名が公表されてる以上、地元の人であれば、何という刑務所なのかはすぐわかってしまいますよね。(^_^;)

モーガン・スパーロックの 『JAIL』_b0069502_17315490.jpg現地に到着して、いざ入所手続きへ。そして、彼に渡される1枚のマットレス。
監房棟は中央が大きなホールがあり、その周りを監房室のドアがいくつもあって、ぐるりと囲んでいるような感じでしょうか。入所者は自分の部屋を出ると階段を下りて、中央ホールに集まるのです。で、しょっぱなから衝撃的だったのは、自分が寝る部屋は自分で探すこと。
すでに定員オーバーなので、部屋とベッドが間に合うはずがなく、新入りはマットレスを抱えながら、部屋を一軒一軒廻って、受け入れてもらえそうな部屋を探すのです。こんなアバウトでいいのかなぁ、とカルチャーショックを受けるワタクシ。
左の写真でスパーロックは上段ベッドに横たわっていますが、実際は床の上で寝てました。
トイレ(鉄製!)はどの部屋にもあって、いつでも使えますが、便器は何の囲いもないので、同室者の前で用事を足すことになります。ホールにも個室トイレがあるんですが、使用中に誰かに突然ドアを開けられたりしないよう、使用中と書いたメモを挟んで置かなくてはいけません。
シャワーもありますが、カーテンを閉めたとしても、2階にいる利用者からはすべてがお見通し。ここにはプライバシーなんてものは存在しないのです。

それから、更に驚かされた刑務所の実態は、入所者が延々と放っておかれること。24時間、何の使役も与えられず、虚しく時間を過ごすだけの日々。何もしないで、孤独や退屈と戦うこともまた、彼らに科せられた罰なのです。当然、時間潰しの娯楽なんて、あるはずがないし。彼らを更生して社会復帰させるための施設のはずが、何のケアもされず放置されっぱなし、という驚くべき実態が明らかにされます。
中には労働に就く者もいます。これはある意味、特権的なことなのだそうですが、これはこれで拷問。作業内容と言えば、入所達の食事の準備、シーツや囚人服のクリーニング、と言ったところなのですが、入所者数事態が膨大なだけに、準備する食事や洗濯の量が並ではありません。働けど働けど、仕事はなくならない。下手をすれば、延々72時間休みなしで労働するわけで、すでに人間の体力の限界を超えてしまっているわけです。
入所者のほとんどが前科者で出戻り。しかも、統合失調症などの精神疾患者が多い。実際、全米中で心の病に患っているのは医療施設より、刑務所で過ごしている人の方が圧倒的に多いのだそうです。服薬治療を受けている入所者は、毎時間、看護士からガラス窓ごしに呼ばれて、薬を受け取ります。

途中でスパーロックは独房に移ることになります。
独房に入るのは、重度で危険度の高い利用者。一人部屋だから、いいんじゃないかと思ってましたが、とんでもなかったです。相部屋も狭かったけど、独房はさらに小さくて、そこに閉じこめられているだけでも発狂しそうになります。ドアにはほんの小さい窓があって、囚人はそこからしか外の世界を見ることができない。誰とも口をきかず、一歩も部屋を出られず、自分が生きていることさえ、世界中から忘れられてしまったかのような閉塞感を味あわされるのです。
ようやく独房から出ることが出来た日、見慣れたはずのホールの広さに別世界を見るような錯覚すら彼は覚えてしまいます。

入所期間中、面会が許されたのは2回。
1回目の面会は両親。取材のために牢獄体験しているとわかっていても、ガラスの向こうにいる囚人服姿の息子に両親は戸惑いを隠せません。
「面会の直後ほど、深い孤独を感じることはない、と言われたけれど、本当だった」とスパーロックは語っていましたが、その辺は果たしてほんとかなぁ、と苦笑しちゃいました。
2回目はもちろん、愛するアレックス。映画でよく見るように、ガラス越しに手を重ねる二人。涙をこぼすアレックス。スパーロックって、かっこいいけど、彼の妻でいるには相当の忍耐力が必要なのではないでしょうか?
「私ったら、なんで、もっと普通の男性を好きにならなかったんだろう」と考えたことはないのでしょうか。  
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スパーロックと同室していたのは50代の黒人男性と25歳の白人青年。いずれも出たり入ったりして、人生の大半を獄中で過ごしています。
特に青年は少年の頃から麻薬中毒者で、真夜中でも禁断症状に襲われ、あまりの症状の激しさに息の根が止まるのではないかと、スパーロックはヒヤヒヤ。これほどの状態なのに、ここの施設では放っておかれるんですね。
青年は育った環境が恵まれておらず、もっと身近の人間か彼を支えてくれたら、彼の人生はもっと違うものになったはず、とスパーロックは言います。
青年は麻薬中毒者専用の施設に移ることになったから、彼はもっと人間的な生活ができるようになるだろうとスパーロックは期待します。そして、50代の黒人男性も刑期を満了して、娑婆に出られる日がやって来ました。「ここを出たら、絶対真人間になってやる。」とスパーロックに誓った男性。スパーロックは自分が出所したら、どこかで飲もうと約束します。

スパーロックにも刑務所を移る日がやって来ました。
移転先は薬中青年が移って行ったのと同じ刑務所。しかし、ここは薬物中毒者を更正させるための特別プログラムが組まれており、一日のスケジュールがしっかり詰まっていました。月に何度か、外部ゲストの講演があり、その講演者は薬物地獄から見事脱出することができた人とか、ちゃんと社会復帰できた人の体験話だったりして、入所者に希望を与えるものです。グループ・カウンセリングまであって、前者の施設とは何もかもが対照的。スパーロックは元同室者に再会しますが、以前の彼とは別人のように明るくなった笑顔を見ることができました。
しかし、青年は保釈金を積んでもらって、その刑期を全うせずに出所してしまう。スパーロックは懸念します。「ここでの更正プログラムを最後まできちんとやり終えてから出所するべきだった。このままではまた、犯罪を犯してしまうような気がする。」
更正プログラムを最後までやり終えた者の中で、再び犯罪を犯すことがなくなった者は全体の数パーセントにしか過ぎないと言うが、それでも人数にするとかなりの数になるになるそうなので、社会的には大きな貢献になるわけです。
自分の家族にまで見放されていた彼が保釈金を出してもらったのがちょっと矛盾するというか、不思議だったのですが、スパーロックの予想どおり、青年は2週間も経たないうちに逮捕されます。そして、前の刑務所で一緒だった黒人男性も再び逮捕・投獄。スパーロックと娑婆で飲もうという約束は果たされなかったのです。
スパーロックは27日目に釈放。ここの国の規則で、刑期の8割を全うすると、出所できることになっているそうです。

自分は刑務所というものについて偏見を持っていたと思います。
国によって、アメリカと日本では施設のあり方というものが違うとは思いますが、刑務所というものは本来、罪を犯した人間が反省し、社会に適応するために学び直す場所。自分は危険な犯罪者を野放しにしないで隔離しておく場所だと漠然と認識していました。
事実、犯した犯罪があまりにも重篤で、再び繰り返す危険性が高いケースもあるので、そういう見方も仕方ないと思うのですが。
スパーロックが最初に入所した施設は、自分が思い描いていた刑務所とほぼ近いと思います。って言うか、自分が想像していたよりも酷い。後に移転した施設は、まさに目からウロコ、でした。刑務所の概念を大きく裏切るものがあったというか。ムショと言えど、どこでも同じ、というわけではないんですね。
犯罪者であろうとも、我々と同じ人間。人間性を尊重し、自分を肯定できるように導くことが、再び犯罪に走ることなく、社会の一員として復活できる近道なのかも知れません。

今後の『30DAYS 第2シリーズ』

モーガン・スパーロックの 『JAIL』_b0069502_17343098.jpg
第2話 「不法移民と30日間」
6月23日(土)

第3話 「アウトソーシングを30日間」
6月30日(土)

第4話 「人工中絶論争を30日間」
7月7日(土)

第5話 「無神論者と30日間」
7月14日(土)

第6話 「ニュー・エイジ体験を30日間」
7月21日(土)




これは、スパーロックと妻アレックスのBaby。
ご本人のブログ(放置プレイ状態)で公表されていました。すでにパパ譲りのおヒゲがあるところがコワイ。
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モーガン・スパーロックの『30DAYS』第2シリーズ

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30Days Archives
Commented by かるろす まこう at 2007-06-22 14:13 x
marikzioさん、この赤ちゃんの髭写真、ホンマにマジですか?
ぎょえぎょえ~っち!\(゜ロ\)(/ロ゜)/

Commented by marikzio at 2007-06-22 18:52
かるろすさん
本物ではないと思いますが、ほんとよく出来てますよね。
それにしても、Daddyそっくり!
by marikzio | 2007-06-20 17:30 | Television | Comments(2)

marikzio=mahのブログにようこそ。私の好きな音楽や映画を紹介しています。


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