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-Bitter Moon- by Roman Polanski

これは、10年以上も前に観た映画なのですが、ポランスキー作品の中で自分が一番好きな映画だったので、ブログに残すことにしました。

豪華客船で若い夫婦が出会った、一組の奇妙なカップル。車椅子の初老紳士と若くて妖艶な美女。初老紳士は、一方的に語り始める。欲望のおもむくまま、女と一緒に溺れて行った性愛の日々を。愛が憎悪に変わる時、そこに待ち受ける悲劇とは...。
これは極限のラブ・ストーリー。"どんなに歪んでも、愛"
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『赤い航路』 1992年
監督 ロマン・ポランスキー
出演 ピーター・コヨーテ、エマニュエル・セイナー、ヒュー・グラント

-Bitter Moon-  by  Roman Polanski _b0069502_11264125.jpg地中海を航海中の豪華客船。
イギリス人夫婦のナイジェル(ヒュー・グラント)と妻のフィオナ(クリスティン・スコット・トーマス)はイスタンブールに向かっていました。この旅行は互いの愛を確かめ合うのが目的の旅。

フィオナはトイレの中で船酔いしている一人の女性を助けることになります。
その若い女性は艶めかしい風貌でいかにも奔放そうに見える。
「あなた、美人なのね。」と女はフィオナに言う。それが、2組のカップルが顔見知りになるきっかけとなるのです。
女はフランス人でミミ(エマニュエル・セイナー)といい、連れがいました。夫はアメリカ人で作家のオスカー(ピーター・コヨーテ)。彼は半身不随の障害者で、派手なミミとは不釣り合いに見えました。

どういう流れでそうなったのかは忘れましたが、ナイジェルはオスカーの部屋に呼ばれ、しばし、二人きりで時間を過ごすことになります。
「うちの妻をどう思うかね?」
「美しい奥様ですね。」
「ミミと寝てみたいと思わないかね?」
オスカーはミミに向けられるナイジェルの視線を看破していたのです。セクシーなミミの姿に心を動かされない男はいない。そして、自分は今、こんな体なので、彼女を抱くこともできない。
「自分も昔はこんな風じゃなかった」言葉を続けるオスカー。
そして、自分とミミとの出会いを語り始めるのです。

祖国アメリカを捨て、パリにやって来たオスカー。
肩書きは作家でしたが、ろくに作品も書かず、親が残した遺産で気ままな生活を続ける彼は、この都でも、数々のアヴァンチュールにうつつを抜かしていました。
そんなある日、バスの中で、一人のワンピース姿の女性に目が止まります。その美しさに目を見張るオスカー。幼さの中に滲み出るセクシャリティー。オスカーはその時、直感めいたものを嗅ぎ取ったのかも知れません。
やがてバスの車掌が切符をチェックしにやって来ました。その女性は自分の切符をなくしたらしく、あわててポケットやバックの中を探っています。オスカーは彼女に自分の切符を差し出しました。驚く彼女。オスカーは切符不所持ということで、その停留所でバスを降りることになりました。後ろの窓から、オスカーを見つめる長い髪の彼女。
彼は再び、その女性に会いたくなって、毎日のように同じ路線、同じ時刻のバスを捜すようになります。そう、彼は恋をしてしまったのです。しかし、なかなか、その女性に会うことはできない。
ある日、街で引っ掛けた女性と食堂に入った時、彼は注文を取りに来たウェイトレスに目が釘付けになりました。あの彼女だったのです。
「君は、いつかバスの中の...」思わず話しかけるオスカー。なんと彼女もオスカーのことを憶えていてくれました。食堂の同僚が彼女のことを"ミミ"と呼んだので、ミミはその場を立ち去らなければならなかったのですが、彼女は勤務終了後、オスカーと落ち合う約束をしました。

ミミはダンサーを夢見るパリジェンヌ。ダンス留学のため、ニューヨークに渡ったこともある。彼女は財布の中に、オスカーから手渡された切符を大事に持っていました。彼女もまた、彼にまた会えることを望んでいたのです。無邪気で魅力に溢れるミミにオスカーはすっかり夢中になってしまいます。
二人はその日のうちにベッドイン。そして、次の日から片時も離れられないようになっていました。一日中、外出もせず、貪欲なまでに愛の行為に耽る二人。純情可憐だったミミの中に官能性が目覚め、急激にそれは開花していくのです。
二人は、思いつく限りの秘義を実行し、お互いの体にのめり込んで行く。特にミミはオスカー以外の誰も目に入らないようだ。カミソリで髭をそっている彼にねだって、自分が髭をそってやろうとしたが、彼の顔に傷をつけてしまう。男の血を思わず舐めるミミ。ここは今後の展開を暗示しているように思えます。
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しかし、このカップルにもマンネリ化が訪れ、さほど強い興奮を得られないようになります。この状況を打破すべく、彼らは偶然にも新境地を見出すことになりました。それはSMや放○プレイなどのアブノーマル路線。ここに来て、オスカーの描写は露骨で醜悪なものとなって行きます。
「もう、たくさんだ。」変態男にナイジェルは激しい嫌悪を禁じえない。
「お前は女を崇拝したことがあるか?女の前に膝まづき仰ぎ見たことは?」
「もう失礼する」
「私の話は終っていない」
オスカー達の部屋を出たナイジェル。目の前には変態妻ミミの姿が。思わせぶりな態度を見せるミミにナイジェルは心を揺さぶられます。オスカーの話は不快きわまりなかったが、ミミの吸引力は半端じゃありません。結局、激しい好奇心に突き動かされて、ナイジェルは次の日もオスカーの話を聞きに行ってしまうのです。

ミミにさほど情熱を持てなくなって来ると、オスカーは彼女と一緒にいることに息苦しさを覚えるようになります。自分は気が多くて浮気者。自分はもっと外に出て、いろんな人に会いたい。いろんな女を抱きたい。
しかし、嫉妬深くて気性の激しいミミはますます彼を独占したがり、常に欲情に身を火照らせ、彼を求める。二人の間に険悪な空気が流れ、言い争いが増えて行く。
ミミに嫌気が差したオスカーは、公然と他の女達を引き連れ、恋人に精神的苦痛を与えるようになるのです。ストレスで顔に吹き出物が出始めたミミを女達の前で笑い物にするオスカーの非道な仕打ち。
「お前、最近ダンスはやらないのか?」と嫌みを言うオスカーに対し、「ダンスは心よ。」とミミは答えます。「私の心はもうボロボロ。」

一度は別れを決意し、彼の元を去って行ったミミですが、次の日には再びアパートの前に姿を現します。
「愛してくれなくていい」オスカーの足元に崩おれるミミ。「あなたの傍にいさせて」
しかし、彼女にいい加減飽き飽きしていたオスカーは結局、捨ててしまうんですね。それもかなり非情なやり方で。実は妊娠していたミミ。しかし、精神的ショックがもとで彼の子を流産してしまい、そのせいで子供の産めない体になってしまうのです。

以前の独身貴族のような生活に戻ったオスカー。美女をとっかえひっかえ、朝まで飲み明かす、というような自堕落生活を再び謳歌。しかし、因果応報というか、朝帰りした日、泥酔していた彼は家の前で車に跳ねられてしまうのです。
幸い手術は成功して、何日かすれば以前の生活に戻れると言われていた彼の病室をなんと、ミミが見舞うのでした。
「自分は君にあんなことをしたのに、なんて優しい女なんだ。」
久しぶりに会う元カノは輝くばかりの美しさを取り戻していました。こんな風に手を握りあっていると、遠い昔、恋に落ちたばかりの時を思い出します。
「こんな風に手をつないだこともあったよな。」
しかし、ミミはオスカーの手を離そうとはしませんでした。彼の手を引っ張って、ベットから床に落としてしまったのです。
「あの恨みは一生忘れるもんですか」
この事故がもとで、彼は二度と立てない体になってしまいました。そして、車椅子生活の体になった彼をミミが付き添うことになったのです。

再びともに暮らすことになった二人。しかし、以前の生活とはあまりにもかけ離れているものでした。ミミは無力なオスカーを動物並みに扱い、侮辱するようになります。しかし、自分は、かつてそれ以上の苦痛を彼女に与えたので、文句を言うことはできない。
若さと魅力を取り戻したミミは、知らない男を部屋に連れ込んでは、オスカーの前であてつけにファ**すらして見せるのです。
オスカーは悟りました。ここまで愛も憎しみも共有できる相手はこの女以外にいない、と。そして、二人は夫婦となったのです。

ミミに翻弄され、心を奪われつつあったナイジェルは妻フィオナのことがどうでもよくなってしまう。二人の愛を確かめ、深めあうはずの旅で、逆に迎えることになった夫婦の危機。もはや、ナイジェルの頭はミミで一杯。
しかし、イギリス男の心を弄んだミミが、ベットに誘ったのは、なんと彼の妻だったのです。
「ごらん、美しいと思わないかね。」
ベットの中で疲れて眠るミミとフィオナを指差し、ナイジェルに訊ねるオスカー。
「でも、もうこんな関係はたくさんだ。」そう口にした瞬間、オスカーは拳銃でミミの頭部を打ち抜くのです。
銃声で飛び上がるフィオナ。隣には血まみれの女。そして、オスカーはその拳銃を口にくわえ、もう一度引き金を引いたのでした。

原作はパスカル・ブルックナーの同名小説。
小説も読みましたが、オスカーは医師、ミミ(違う名前だったような)は美容師、という設定。そしてラストは映画のようなドラマチックなものではなく、男が愛した女の顔に熱湯をかけて火傷を負わせる、というものでした。道行く人が振り返る美貌を奪われた女は、しかし、男を恨むことなく、二人で老夫婦のように心静かに暮らして行く、という終わり方でした。
彼女は男に復讐している時も、彼のことを愛していたのではないでしょうか?
このストーリーに「女はコワイ」と思った男性も多いでしょうが、私は彼女の直情的なキャラクターに人間味を感じて、切ない話だなぁ、と思ったものです。

ミミ役のエマニュエル・セイナーはポランスキー夫人で当時26歳。彼女の色香と体当たり演技には圧倒されました。親子ほどの年の差カップル、というのにもビックリなのに、本編は過激なシーンが多くて、「ポランスキーは自分の奥さんにこんな事をやらせるなんて、普通じゃない。やっぱりこの男は変態だ!」と思ったものです。
ポランスキーは本国アメリカで公序良俗に関わる事件を起こして、ヨーロッパに逃亡して以来、祖国の地を踏んでないんですよね。アメリカ入りしたら、逮捕されちゃうんでしたっけ?
オスカーはパリのアメリカ人。そこがまた自分の人生と重なるところもあるのかな。とんでもない映画だったけれど、ポランスキー夫人の妖しい美しさが一際輝いた作品。それが妻に対する愛情表現だったのかも知れませんね。

You Tube 『赤い航路』予告編

赤い航路
ピーター・コヨーテ / / ジェネオン エンタテインメント
ISBN : B0001E3CM8
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by marikzio | 2007-01-25 11:39 | Movie | Comments(0)

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