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-The Sun- by Aleksandre Sokurov

邦題『太陽』。
昭和天皇ヒロヒト。"神"と崇められ、日本の権力の頂点に君臨していた人物が8月15日、軍事行動の停止を命じる。
「私は神ではなく、一人の人間」と日本国民に呼びかけた天皇ヒロヒトの苦悩と決断。終戦直前までの天皇は「神聖なお方」とされ、謎に満ちていたのです。
-The Sun-  by  Aleksandre Sokurov_b0069502_2052232.jpg
ロシアのアレクサンドル・ソコーロフ監督によって描かれた本作はロシア、ヨーロッパでは公開されたものの、日本国内では公開不可能とされていました。
しかし、いつの間にか、青森市内の映画館でも上映されることになっていて、これを見逃すわけには行かないと、出かけて参りました。小さな会場ですが、興味を持っている人が多かったようで、八割近くは埋まっていたと思います。
公開不可能とされるような問題のある内容ではないと思うのですが、別な事情で公開が遅れたのでしょうか?

史実に基づいたお話なのかと思って観たのですが、フィクションを前提として描かれているそうです。
宮殿は米軍の空襲で焼け落ち、昭和天皇(イッセー尾形)は地下の防空壕か皇居内で唯一無事だった生物学御研究所で暮らしています。彼に仕えるのは侍従長(佐野史郎)と老僕(つじしんめい)。朝食を摂る天皇ヒロヒトに本日のスケジュールを事務的に伝える侍従長。
日本側が苦戦を極めている英語のニュースに「私以外の日本人は皆死んでしまうのではないか?」と口にするヒロヒトに対し、侍従長は「陛下は天照大御神の天孫であり、人間であるとは存じませぬ」と答えます。「私だって一人の人間なんだ。私の体は君と同じだ」と抗議するヒロヒト。
老僕にシャツを着せてもらっているシーンがありますが、自分で着替えをしてはいけないことにでもなっていたのでしょうか?平民の自分にとってはちょっと理解し難いです。
ヒロヒトがアルバムに見入って、皇太子の写真に口をすぼめて接吻したり、アメリカ映画の俳優女優の写真を保存している場面も意外でした。(これはフィクションなのか?)
あと映画の中のヒロヒトは英語が堪能。とは言っても発音はベタなジャパングリッシュそのものでしたが。英語の他にも何ヶ国かたしなんでいるようです。

-The Sun-  by  Aleksandre Sokurov_b0069502_2241321.jpg映画はつまんなくはなかったのですが、淡々とした流れで前半部分は何度かウトウトしてしまいました。でも、マッカーサーと会見する後半は面白かったです。
米国側に通訳係がいたのですが、「この方は神聖なお方だから近づき過ぎないように」と上司に忠告したり、「陛下は英語を使ってはいけません。相手と同等になってしまうから」と諌めたりして、外国人のくせに日本の天皇至上主義にどっぷりハマっているわけです。洗脳されているわけではなく、相手国を尊重しての態度だったのかも知れませんが、かなり異様に映りました。
生物研究所?の前でアメリカ人記者の被写体となったヒロヒト、彼らに「チャーリー(チャップリン)みたいだ」と囃し立てられ、「私はあの俳優にそんなに似てるのかね?」。
マッカーサーからハーシーの板チョコを箱入りで送られ、この摩訶不思議なお菓子を「これは"チョコレート"って言うんだよ〜」と言いながら従僕達に配る姿もお茶目で微笑ましい。
マッカーサーに「真珠湾攻撃は貴方の指示だったのか」と切り込まれ、「自分はそういう指令は下していない」と答えています。何ともつらい立場だったのですね。
その後、帰ってから無力感に襲われ、机の前で呆然とするヒロヒト。心配して、戸口から覗き込む老僕に「一人にしてくれ」と言い放ちます。それでも付きまとう彼の額をペシッとやるところが可愛いかったです。

天皇ヒロヒト役のイッセー尾形はさすがに巧いと思います。声が低くて、おっとりした喋り方とか、視線のさまよわせ方とか、まさにヒロヒトの生き写しにしか見えませんでした。
皇后役の桃井かおりも皇后ソックリ、というわけではないですが、味のある演技をしてました。
「私は神であることの運命を拒絶した。これで私たちは自由だ」と皇后に抱きついて言うヒロヒトに、「あ、そう。そうだと思ってました」と応じる皇后の姿にじ〜んと来るのですが、次の瞬間、私たちは凍るような結末にぎょっとすることになります。

「私の国民への語りかけを記録してくれた、あの録音技師はどうなったかね?」
「自決しました」と答える侍従長。
「止めたんだろうね」
「いいえ」

侍従長役の佐野史郎の冷淡な演技も良いですね。やっぱり、狂信的なキャラをやらせたら、彼の右に出るものはいない。
この映画はフィクション、ということですが、録音技師が自害したのは実話かも知れませんね。当時の天皇崇拝がどれほどだったのかが如実に描かれていて空恐ろしいほどです。
外国人監督の下で日本人キャストはベテラン揃いでリアリティーのある演技をしてました。途中で居眠りしてしまったのが悔やまれます。

日本語公式サイト 太陽  The Sun
画像元 太陽 -作品紹介
by marikzio | 2006-12-25 22:03 | Movie | Comments(0)

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