-Nathalie...- by Anne FONTAINE
夫の裏切りに気づいてしまった妻。
知っているようで知らなかった夫のセクシャリティー世界。秘密の会員制クラブで知り合ったプロの女に、彼女はある頼み事をする。
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邦題『恍惚』。
出演 ファニー・アルダン、エマニュエル・ベアール、ジェラール・ドパルドュー。
監督 アンヌ・フォーテーヌ。
2003年 フランス。

妻であり、産婦人科医でもあるカトリーヌ(ファニー・アルダン)。25年間連れ添っている夫のベルナールの誕生日の夜に、サプライズ・パーティを開いて彼の帰りを待っていました。しかし、出張先のスイスから帰る予定だった彼は、搭乗する便を遅らせることになり、「今夜中には帰れそうにない」との電話が入り、あえなくパーティはお流れに。
落胆してベッドに就いたカトリーヌが目覚めると、そこには朝帰りしたばかりの夫の姿が。「自分の誕生日なんて、すっかり忘れていた。」と挨拶もそこそこに勤め先に向かったベルナール。彼が忘れて行った携帯電話を見つけたカトリーヌ、好奇心に打ち勝つことができなくて、彼宛の留守電メッセージを聞いてしまいます。
「夫は別の女性と会っていた!」
妻にその事実を問い詰められたベルナールは悪びれもせず、あっけらかんとこう言い放つのです。「こんなの一人二人じゃない、それに情熱はすぐ冷めてしまう。それに僕たち、セックスレス・カップルじゃないか。」
開き直るどころか、自分達の冷め切った関係を指摘されて、動揺を隠せないカトリーヌ。自分は、夫のもうひとつの世界を何も知らなかった、と言うことにも彼女は打ちのめされてしまいます。

カトリーヌの勤務先の近くにある、謎の会員制バー"SHOGUN"。
中に入らずとも、ドアから客を見送る娼婦たちの姿は何度か見かけていたので、彼女はある決意を胸に秘め、女一人で、秘密クラブの扉を開きます。
そこで、一人の若いブロンド女に目が止まります。「彼が好みそうなタイプだわ。」
彼女の名はマルレーヌ。波打つ体の線に、あざといアイメイクで縁取られた大きな目。感情を押し殺したような、どこか冷めてる雰囲気に同性でさえも魅了されてしまう。この女は夫が望んでいるものを与えてくれるに違いないと、カトリーヌはそう直感したのです。
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「あなたにお願いがあるの。」
「女の相手だってするわよ。」
「夫のことで」
「3人でプレイしたい、ってこと?」
「いいえ、夫には内緒で、彼を誘惑して欲しいの。」

ベルナールの前に登場する女はナタリー。通訳の勉強をしている女子学生、ということで、毎朝彼が顔を出すカフェに行って欲しい。そこで、煙草の火をもらうふりをして、彼に近づく...。ここまで具体的な設定を決め、夫との間に起こったことを逐一報告するように約束させるカトリーヌ。昼間のカフェで落ち合った時のマルレーヌはノーメイクでシンプルなシニョン姿。その自然体な美しさは夜の妖しさとは対称的。ナタリーはごく普通の女であって、商売女ではないから。

「彼は狙い通りに、喰いついて来たわ。」淡々と報告するマルレーヌ。「そして、部屋に行ったわ。」
「待ってよ、ナタリーは普通の女なのよ。それに、寝ろだなんて頼んだ覚えはないわ。」
「だって、誘われてしまったんだもの。どうしろと?」
嫉妬と嫌悪感で自制心を失ってしまったカトリーヌ。夫がいきなり見知らぬ女性とそんなことをするはずがない、と心のどこかで信じたい気持ちが残っている。浮気の証拠を見せつけられているにも関わらず。
「この話はこれで終わりね!」と言い捨てて、カフェから立ち去ってしまいます。

b0069502_10292360.jpgしかし、再び、秘密バーに姿を現すこととなるカトリーヌ。
ベルナールがどんな行為をしていたのかが知りたい。やっぱり、マルレーヌとの間に起こったことを聞いておかなくては、という激しい好奇心に突き動かされていたのです。
接客中のマルレーヌはカトリーヌを見つけると、アイコンタクトで2階に上がるよう指示します。
そこはホステス達の衣装部屋。客を迎え入れて、行為に及ぶこともある。
女ふたりっきりの、その赤い空間で、マルレーヌの口から語られた閨房での詳細...。それは想像を絶するほど猥雑でエロチック。胸を裂かれるような思いにかられながらも、マルレーヌの告白はカトリーヌを魅了してしまう。
「あなたは感じたの?」
「いいえ、私はいつも冷めてるわ。だってプロだもの。」

そして、二人は何度となく落ち合い、ベルナールとの情事を"共有"します。
マルレーヌの告白は回を追う毎にエスカレート。カトリーヌは彼女の話で頭がいっぱいになってしまい、家庭にいてもうわの空。こんな濃密な時間を過ごしているはずのベルナールは、妻の前では何事もなかったかのように、おくびにも出さない。
「あくまでもシラを切ってるのね。私はすべてを知ってるのに。」
マルレーヌはカトリーヌの仕事場にまで姿を現して、過激なプレイを事細かに再現。
「ベルナールはそんな男じゃないわ!」
遂に怒りが爆発。もうこれっきりにしましょう、と最後通告を突きつけてしまいます。

しかし、その後、カトリーヌは再びマルレーヌの仕事場を訪れるのです。
マルレーヌのもう一つの顔はデパートのコスメ売り場で働く美容部員。エスティシャンの資格を持つ彼女は、ゆくゆくはこの世界を捨てようと考えていたのです。
「私も男と寝たわ。」若いバーテンの男と関係を持ってしまったことを打ち明けるカトリーヌ。二人はもはや"共犯関係"。この関係を続行しようと提案するカトリーヌ。
そして、部屋を追われているマルレーヌのためにアパートを与えたりして、パトロンのような関係になっていくのです。ちょっとレズビアン的な匂いもあったりして、スリリングな展開です。
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しかし、ねぇ...。
第三者側、つまり観客側から見ると、マルレーヌの告白って、過剰過ぎて嘘っぽいんですよね。時々、辻褄が合わない、と思わせる場面もあったりする。予想どおり、マルレーヌの話はただの創作で、ベルナールとは知り合いにもなっていない、ということが判明するんですが、そのことに安堵感を覚えた私です。
「寝なくても金が稼げるオイシイ話」だと思って、作り話を聞かせたマルレーヌの気持ちはわからなくもないんですが、クライアントに「ベルナールは本気になってしまったみたい。自分のことを大切な存在にしたい、と言った。」などと言って、自分たちが抜き差しならぬ関係になりつつあると、明言までしています。厄介なオンナです。虚構の世界を語っているうちに、それが現実だと思い込むようになってしまったのかも知れません。自分達はあくまでも男たちの欲望に応えるだけの影の存在。そこには"愛"なんて存在するはずないから...。

このスーパー・エロチック映画、どんな変態おじさんが作ったのやら、と思ったら女性の作品でした。女性独特の感性で描いた、非現実的とも現実的ともとれる官能世界。夫婦の危機、なんてどこにもありそうですから。
よく男性と女性の性的相違点として、男性は写真や映像などビジュアル的なものに性的興奮を覚えやすく、女性は視覚から直接入る刺激よりも、ハーレクインなどの性的描写でセクシャルな気分になると言われていますが、この映画は、まさにそれを具現化したものだと思います。
この映画を限りなくエロいものにしているのは、ベアールの口頭による陳述。ひたすら喋るだけで、ドパルデューとの絡みなんて一切出て来ないんですよね。だから、観客は自分のイマジネーションに頼るしかない。でも、空想の世界を広げることが、極上の愉しみとなるのです。

主演のファニー・アルダン、複雑な役どころを巧く表現していたと思います。
上流家庭の知的な奥様の、夫の浮気に対する絶望感と嫉妬、そして、ふつふつと沸き起こる好奇心。確かイタリアに、浮気な夫を自分のところにつなぎとめておくために、妻が若い女(娼婦)を次々と買い与える、という小説だったか映画だったかがあったような気がしますが、こういう屈折した感情って、アメリカとかにはないような気がします。
そして、エマニュエル・ベアール、相変わらず蠱惑的でお美しい!『美しき諍い女』の頃とほとんど変わってない肌質、ボディライン、溜め息ものです。
40歳近いと思いますが、これからも、このようなセクシーな作品にどんどん出演していただきたいです。

日本語オフィシャルサイト Nathalie... "恍惚"
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by marikzio | 2006-10-03 10:07 | Movie | Comments(5)
Commented by Rimbeau  at 2006-10-03 20:23 x
ごらんになられたのですね!
私もマルレーヌのいう事がウソだとわかってホッとしました。

実はフランス映画祭でこの作品を見たんですが
上映後のベアールサイン会は暴動のごとく
人が押し合いへし合い!!!

人が多すぎてサインはもらえなかったけど
”歩くフェロモン”ベアールはとってもキュート&セクシーでしたよ!
女性ファンの方が多そうですよね、彼女。

あ、この作品の同監督の「ドライ・クリーニング」をご存知ですか?
「恍惚」に負けじと劣らず、すんごぉいハ~ドですよ!

Commented by marikzio at 2006-10-04 12:37
素敵な生ベアールを見られたんですね。うらやましい!
彼女もミレーヌと同じように年齢不詳なオンナですよね。あっ、アジャーニもだっ。

>あ、この作品の同監督の「ドライ・クリーニング」をご存知ですか?
>「恍惚」に負けじと劣らず、すんごぉいハ~ドですよ!

情報ありがとうございます。
メモメモφ(._.)、と。
Commented by ryoko at 2006-12-15 06:25 x
marikzioさん、こんにちは。そして初めまして。

Rimbeauさんのブログを経由してときどきお邪魔させて頂いています。
情報が豊富で、読み応えもあってとても素敵なブログですね。

わたしも「恍惚」の記事を書きましたので、トラックバック
させていただきました。
わたしは鈍くて、終盤の3人がカフェで顔を合わせる場面が
ありましたよね、あそこで「えーっ!そうだったの!!」と
驚いてしびれてしまいました(^^ゞ
ベアールのセクシーさにはほんとうにため息が出てしまいます。

それでは、またお邪魔しますね☆
Commented by marikzio at 2006-12-15 12:25
ryokoさん、初めまして。
でも、Rimbeauさんのところでは何度か見かけてますね。私のブログも読んで頂き、ありがとうございます。

ryokoさんのブログもステキな写真や映画の話がいっぱいでお洒落なサイトですね。これからも、よろしくお願いします。
Commented by ryoko at 2006-12-18 06:26 x
marikzioさん、こんにちは。
トラックバックに再度挑戦したのですが、反映しないようです(T_T)

トラックバックURL(http://marikzio.exblog.jp/tb/5799588)も
間違いなく貼り付けていますが・・・。

こちらにURLを書いておきますね。
http://orange.ap.teacup.com/applet/cinemagirl/20061215/archive


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