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「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」

「まさかのBLシリーズ 実写ドラマ編」2作目は『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』。
同人サークルの漫画家と新進気鋭のアイドルという全く異なる世界に生きる幼馴染の二人の少年。「二度と交わることはないハズだった」2人の人生が思いがけない形で再び交錯していく異色の青春ストーリー。


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原作はミナモトカズキ先生の同名コミック。長いタイトルですが通称「壁こじ」と呼ばれています。
文字通り承認欲求をどうしようもなくこじらせちゃっている主人公が幼馴染との再会や様々な出会い、経験を通じて成長していく物語と言いましょうか。
好きなことをするのは苦しいことでもあるけれど夢に向かって走り続けたい、走り続けることしか出来ないという二人の青年の姿に共感すること間違いなしです。


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同人サークルでゲイ漫画を描いている猫屋敷守。サークル名は「筋肉百貨店」でペンネームは骨肉(ほねにく)。新刊「俺の雄っぱいがでっかくなっちまうくらいちゅーちゅー吸ってくれ162.png」を掲げてコミキンに壁サーとして出陣。「壁サー」とはコミキンの大会場で壁際に売り場を配置されるサークルのこと。人気サークルには長い列が出来ることから、他の売り場の邪魔にならないよう壁際スペースに置かれ、かつ目立つポジションもあるので壁サーになるということは同人作家にとってはわかりやすいステイタスなのです。
壁サーでいることは猫屋敷の最も重要なアイデンティティ。壁際に立って自分の漫画を買うために人々が列を作る光景を眺めることでようやく得られるカタルシス。その景色こそが自分の価値を教えてくれる。
「漫画を描いて同人誌にしてイベントに参加して存在価値を認めてもらわないと俺はきっと死んでしまう」

承認欲求が人一倍強いくせに猫屋敷のコミュニケーションスキルは超絶最下層。せっかく好意的な言葉をかけてくれたファンに辛辣な物言いをしたり、「筋肉系BLの作家さん達でアフターするんですけどご一緒にどうですか?」というお誘いにも「サークル同士の馴れ合いには興味がない」とこっぴどく蹴散らし、売り子のお手伝いをしている腐女子の山田ちゃんを慌てさせます。「どうしてあんたは建前とか愛想笑いとかできないのかねぇ」
しかし、その会場には思ってもみなかった人物の姿がありました。
「久しぶりだね、マモっち」。
それは何年も会っていなかった幼馴染の風間一星。彼は今をときめく超人気アイドルグループ「SHINY SMILE」のメンバー、ISSAYだったのです。



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同人ゲイ漫画家の猫屋敷とアイドルの一星。彼らは実家が隣同士という幼馴染の間柄だったのでした。
幼い頃から絵を描くのが好きだった猫屋敷。そして彼の絵を眺めるのが大好きだった一星。いつも一緒で仲良しだった彼らでしたが、スポーツ万能、爽やかな笑顔で人に囲まれている一星に猫屋敷は次第に気後れするように。猫屋敷だって子供の頃は得意な絵で同級生に囲まれ鼻高々な時期がありました。しかし、いつからだろう?好きな漫画を描けば描くほど誰からも見向きもされないようになってしまったのは?おまけにコミュ障だったのでいつも教室の片隅でポツンと漫画を描いてばかりいるような存在になっていました。
そんな隠キャの猫屋敷に一星はずっと変わらずに接し、マモっちの描く絵が大好きだと言ってくれる。しかし、猫屋敷は一星といればいるほど自分が最底辺の人間だと思い知らされる。一番身近なハズの人物と自分を比べてしまってその落差に打ちのめされる。自分が傷ついて惨めな気持ちになるのを感じる。そして中学の卒業式の日、猫屋敷は一星に「お前とはもう一生会わない」と言い渡すのです。中学卒業後、芸能人としてアイドルの道を歩み始めた一星。俺たちの人生はもう交差することはないと猫屋敷は思っていたのです。
実は一星のポスターや推しグッズで溢れかえっていた猫屋敷のアパート。遠く手の届かないところから一星を見守って行くつもりでした。お前はスターとして輝け。俺は俺が一番輝ける場所でトップになってやる。

一方、一星はマモっちと会わないでいた数年間、1分1秒とマモっちの事を考えなかった時はありませんでした。一星にとってマモっちは才能があって優しくて憧れの存在。自分がこの世界を目指したのもマモっちが背中を押してくれたから。
「そんな年がら年中ヘラヘラ笑っているんならアイドルにでもなったらどうだ?」マモっちの嫌味半分の言葉を間に受けて一星はアイドルになることを決意しました。一星の笑顔の裏には複雑な家庭環境があったのです。夫婦仲が冷え切って仮面夫婦だった一星の家。あまりにも静かだったので隣の猫屋敷宅から響いてくる楽しそうな笑い声を彼はいつも聞いていました。僕が笑わなくなったらこの家からは笑顔がなくなってしまうので彼は笑顔でいつづけた。自分でも無意味だと思いかけていた自分の笑顔にマモっちが意味を与えてくれたんだ。彼がアイドルを目指した本当の理由はマモっちに認められたいからだったのです。ひょっとしたらマモっちより闇深かも知れません。
コミュ力が高くて一瞬で人の心を掴むというようなキャラ設定の一星ですが私にはちょっとズレてるというか不思議くんキャラだと思いました。マモっちの描く漫画が筋肉ゲイエロ漫画というニッチなジャンルで性癖てんこ盛りの作品なんだから知り合いには見られたくなかったハズ。そっとしてあげるどころか1ミリも引いてる風でない一星。コミキンの会場に一星は巨大で真っ赤な花束を抱えて現れ、マモっちやその周囲の人々を当惑させます。
そもそも彼はどうやってマモっちが同人活動をしてコミキンに出店していることをピンポイントで嗅ぎつけたのでしょうか?マモっちはゲイであると自覚してますが一星はパンセクシャルなのかも知れませんね。私は一星の「大人にならなきゃいけない時が来てるのかもしれない」という台詞が意味深で気になります。


恐ろしく自己肯定感が低い猫屋敷ですが家族に愛されたり、猫屋敷の雄っぱい漫画を愛して止まない腐女子の山田ちゃんやサークル「髭美人」の髭フランボワーズ先生など彼に関わった人たちを虜にしています。「知れば知るほど病みつきになるスルメみたいな子なのよね」(by 髭フラ先生)。一星からも「マモっち、大好きだよ」と言われても「お前の好きと俺の好きは違うんだ」と跳ねつけてしまうこじらせっぷり。読者にとっても非常に魅力的なキャラです。展開が気になって漫画もドラマも止められなくなってしまうんです。
そして猫屋敷は雄っぱいだの筋肉だの、自分の性癖や趣味を盛り込んだだけでは似たり寄ったりの作風になってしまい読者に飽きられてしまうのではないかと危惧するようになります。何とか自分の作風に新機軸を打ち出して変化を出さないと壁サーでいられなくなると焦燥する。女性向けBLや売れ筋の一般漫画などを研究し「雄っぱい」を封印し、作風をガラリと変えることを試みますが、果たしてその結果は…?



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原作者のミナモトカズキ先生。
別名義でゲイ雑誌で漫画家デビューしていますが、男女の恋愛ものが描きたくなり「ミナモトカズキ」と名義を変えて女性向け雑誌で新たにデビュー。しばらく女性誌で活動を続けていましたが、再びゲイ作品を描くようになったそうです。
「壁こじ」の主人公も作風を変えようと王道BL作品に挑戦しますが、女性向け漫画を描いていた本人と重なりますね。表現の幅があるのは作家として武器ですね。
ミナモト先生の作風は多彩なようでマモっちが描くようなエロめの作品もあれば性的表現がほとんどない恋愛めの作品などかっきり分かれていて作品によって読者層が違うとか、 YouTuberの2すとりーとさんのインタビュー動画で語られていました。最近は腐女子の方でもコアなゲイ漫画を愛読したり、男性ゲイ作家のような作品を描く女性BL作家もいて女性よりゲイにファンが多い方もいらっしゃるようです。「壁こじ」の中でも猫屋敷の読者層は男性が6割、女性が4割である、と書かれていました。腐女子も進化して女性向けBLとゲイ漫画との境目がない人もいるそうな。
「壁こじ」自分的にはとてもツボにハマったので、ミナモト先生の特集をいずれ組みたいと思っています。


ドラマ版「壁こじ」主役の松岡広大さん。あんな端正なお顔立ちなのに、ボサボサ天然パーマのマモっち、やさぐれ感が半端ないです。松岡さんのマモっち解像度が高くて素晴らしいです。髭フラ先生役の加治将樹さんもいかにも〜なキャラを熱演してくださりドハマりしました。
そして劇中にはミナモト先生ご本人とそのパートナーさんもさり気なく出演してます。





by marikzio | 2022-12-28 20:51 | Bande dessinee | Comments(0)

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