-Naissance Des Pieuvres- by Céline Sciamma
これも、ずっと「観たい観たい」と思っていたのを、先日ようやくWOWOWで拝むことができた作品です。
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『水の中のつぼみ』(Naissance Des Pieuvres) 2007 フランス
監督:セリーヌ・シアマ
出演:ポリーヌ・アキュアール、アデル・ヘネル、ルイーズ・ブラシェール


思春期の性と生々しさ、混沌とした情感を残酷なまでに切なく美しく描いた青春映画の傑作。フランス映画界の新星、セリーヌ・シアマのデビュー作。
2007年カンヌ映画祭「ある視点」部門正式上演作品。2008年東京フランス映画祭出品作品。

パリ郊外の新興住宅地に住むマリー(ポリーヌ・アキュアール)は内気で幼さが残る15歳。
友達が通うシンクロのスイミング・クラブでコンテストがあり、そこで一人の上級生、フロリアーヌ(アデル・ヘネル)に目が止まり、心を奪われてしまいます。
すっかり成熟した大人の体つきと、早くも大人の色香ムンムンのフロリアーヌに魅せられてしまったマリーは、彼女に近づき、「あなが練習しているところを見学させて欲しい」なんて言い出すのです。(これでは、ストーカーではないか)
案の定、マリーの存在がウザいと思い、さっさと追い払おうとしたフロリアーヌに「あなたが望むことを何でもするから」とマリーはしがみつく。その熱意に負けて、フロリアーヌはマリーに水着を与え、プールサイドに入るのを許しますが、彼女は練習に参加するでもなく、水の中に潜って、じっとフロリアーヌを見つめているだけなのでした。しかし、フロリアーヌはふとある事を思いつき、マリーの隣に座り、彼女の手のひらに自宅の住所を書き込むのです。
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実はヒロインがもう一人いて、別のストーリーが同時に進行して行きます。
ちょっとおデブで垢抜けない少女アンヌ(ルイーズ・ブラシェール)。シンクロの一員としては、似つかわしくない感じではありますが、一人になった更衣室で裸でいるところに事件勃発!ドアがいきなり開いて、そこには男子水泳部員のフランソワの姿が。思いがけなく、自分の一糸まとわぬ姿を男の子に見られてしまったアンヌ。しかも、その子がまた、ちょっとイケメンだったりするものだから、アンヌの中に恋心にも似たものが芽生えてしまいます。
アンヌはマリーの親友でもあったのです。スイミングクラブで恒例のパーティがあって、二人で出かけて行くマリーとアンヌ。そういう場にはあまり馴染まないのでは?と思われる彼女達でしたが、アンヌはパーティに心ときめく男子がいたこともあって、張り切ってダンス。(これがまた痛い)
しかし、お目当てのフランソワはクラブ1番の美女、フロリアーヌと親密なようで、アンヌの前でキスなんてしてるものだから、彼女の恋心はあっさり傷ついてしまいます。

そして、マリーもまた複雑な思いを胸に抱えていました。フロリアーヌは度々マリーを呼び出すようになりましたが、それはフランソワと密会するためのカモフラージュとしてマリーを利用するため。フランソワとフロリアーヌがデートしている間、フロリアーヌが戻るまで、じっと待っているマリー。フロリアーヌが男たらしである、というのは女の子達の間で周知の事実みたいなものでした。みんな、どこかでフロリアーヌを軽蔑し、面と向かって嫌みを言いもする。そして、そんなフロリアーヌに体よくダシに使われている自分。
「いいんじゃない?男と寝たきゃ、寝れば!」
ついに怒りが爆発し、フロリアーヌに捨て台詞を残し、立ち去るマリーを背後から追うフロリアーヌ。「待って。私は誰とも寝ていないわ!」

マリーとは性格も体つきも全く違うフロリアーヌでしたが、彼女もまた、心に孤独を抱えて苦しんでいました。
「私には友達がいない。私は女に好かれないから」
男達の熱い視線をその髪とうなじに集めるフロリアーヌ。近づいて来るのは、自分を性的対象としか見ていないやりたいだけの奴ばっかり。フランソワだって例外ではありません。確かに、そういう輩を巧みに操って利用するのは楽しいし、話のネタにもなる。
「もう、私なんて、男に迫られて、そんな事ばっかりよ。あなたはどうなの、マリー?そういう経験あるんでしょ?」と連れに振ってみたものの、相手の返事は「ないわ」。
「羨ましいわ」思わず口にするフロリアーヌ。「本当に羨ましい」
フロリアーヌは自分が常にさらされる好色な視線に傷つきつつも、人並みにセックスへの関心を持っています。チャンスには山ほど恵まれているはずですが、未だに一線を越えたことはなく、それについて引け目すら感じていたのです。フランソワと近い将来、そうなりそうな予感はするけれど、自分が実は処女だとわかったら彼は何と思うだろうか?(そりゃ、喜ぶに決まってんじゃん)
こんな胸の内を誰かに話すなんて初めて。閉じられていたフロリアーヌの心は今や殻を破ろうとしているのです。フロリアーヌがセックスについて、いまひとつ踏み込めない恐怖心を抱いているのは、単純にティーンネイジャーだからか、男たちにイヤらしい目で見られて来たために嫌悪感を持っていた為でしょうか?それとも...。フロリアーヌはマリーの自分に対する同性愛的感情にほぼ100%気づいているはずです。ひょっとして、セクシャリティー的に仲間だと思ったから、マリーにだけは心を許すようになったのでしょうか?
「処女を捨てるなら、クラブかどこかの素性の知れない相手と」と思ったものの、それさえ実行に移せないまま(寸止めでマリーが阻止してくれた)、フロリアーヌの両親が留守という夜に、フランソワが泊まりに来ることになりました。
フロリアーヌは、マリーに、あるとんでもないお願い事をするのです。自分の破瓜(ギャー!書いてしまった)はマリーにやってもらいたい...と。

一方、フランソワの事がなかなか諦め切れずにいるアンヌ。犬も飼っていないのに、ご近所からワンコを借り出して、お散歩中とばかりにフランソワ宅の前をウロついたり、ショッピングモールから万引きしたネックレス(女用)をメモと一緒に彼に手渡したり...。これがまた、男子が着替えしている更衣室の中に堂々と入って行って、友人達がはやし立てる中、直で渡してしまうのだ。このストーカーまがいで大胆な行動に、ワタクシ、思わず手で顔を覆ってしまいました。強烈過ぎます。
そして、フランソワとフロリアーヌが初めての夜を迎えようとしている夜、アンヌはフランソワ宅の庭に侵入し、庭に穴を掘って、自分の着用していた下着を埋めていました。
その後、自宅で過ごすアンヌの元を誰かが訪ねて来ました。ドアの向こうに居たのは...、フランソワ!!!(フロリアーヌのところにいるハズじゃなかったのか?)
"おまじない"が効いたのでしょうか?

b0069502_113918.jpg原題の"Naissance Des Pieuvres"とは「タコの誕生」と言う意味。胸から上は優雅で華やかに見えるシンクロナイズド・スイミングの世界も水面下ではタコの足のように必死に水をかいてもがいている。その様を思春期の渦中を生き抜く少女達の姿に重ねる作者の感性が見事。当時、若干27歳の新人女流監督、セリーヌ・シアマは、フランス文学で修士博士号を習得後、名門・フェミス映画学校で学んだというエリート。シンクロをモチーフにした本作品にはもう一つ忘れてはならないキーワードがありますね。シアマ女史はレズビアンであることをカミングアウトしています。マリーのフロリアーヌに対する傾倒ぶり、男達と同じようにマリーに対しても気を持たせるようなフロリアーヌのしたたかさ。それに対比するように、アンヌの野暮ったくて不器用だけどド直球なヘテロ愛。
「マリーのフロリアーヌへの思いって、思春期特有の同性への憧れのようなものであって、一時的なものでしょ?ホントは男の子とキスしたいんだよ」と解釈される方も多いです。でも、フロリアーヌの魅力って、男性をストレートに欲情させるようなファムファタール的なものであって、同性からは反感をかわれるキャラのはず。マリーがド一直線にフロリアーヌにまとわりついたり、彼女の家のゴミをこっそり持ち帰るような固執ぶりって、セクシャリティーの兆候を示すものであって、一時的なものではないような気がするんですが。これについて、シアマ女史は観る者に解釈を委ねていますね。インタビューの中で「マリーは同性愛者だ、と解釈する人はレズビアンかも」なんて語ってるところがあったりして、ビビッたのですが、きっとこれは突っ込みに対する"かわし"と思いたい。
ちなみに彼女のセクシャリティーについては、本国フランスではほとんど聞かれず、日本では婉曲に、アメリカでは「あなたはレズビアンなのよね、そうでしょ」と強引に断言されたとか。フランスでそれに触れられなかったのは、今更どうでもいい問題、と関心を持っていないのでは?とご本人は推測しています。

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それにしても、少女3人のキャスティングが絶妙。とても素晴らしい演技力です。フロリアーヌ役のアデル・ヘネルはすでに女優として活動していましたが、他の2人は映画初出演。主人公役のポリーヌ・アキュアールは現役のリセエンヌで学校帰りの所を映画製作スタッフが見つけ出してスカウト。私的にポリーヌちゃんは「なまいきシャルロット」の時のシャルロット・ゲンズブールとイメージが被ります。そして、アンヌ役のルイーズ・ブラシェールは新聞広告の募集で。
作り手も観客もマリーに共感するように照準を合わせているそうですが、かなり酷だなぁ、と思ったのはアンヌ役のルイーズさんですね。主人公のお母さん?と間違えそうなオバちゃん入ったキャラの上に本編中2回も裸になったり、ベットシーンがあったり。これもかなり痛いなぁ、と思ったのが、マックでお子様向けのハッピーセットを注文するシーン。店員がまた意地悪で「あなたの年齢向けではないわね」なんて言うんですが、アンヌはおもちゃの双眼鏡のオマケがどうしても欲しかったので、断固として押し切ります。で、双眼鏡覗いて嬉々としてはしゃぐアンヌにマリーがうんざりして辛辣なこと言うんですよね。ちょっと可哀想だった。客の注文に「年齢制限あるから」みたいな事を言う店員なんて日本じゃ考えられないし、そんなオマケがあったら大人だって欲しがるかも知れない。
体当たりの汚れ役、これ相当、肝がすわってないと出来ないですよね。彼女、いわゆる美人タイプではないけど、味のある、いい女優さんになるのではないか、と思いました。

あと、どーしても、どーしても気になったのが、マリーとフロリアーヌの....な場面。最初、フロリアーヌがマリーにそれを頼んだ時は、一体どーやってそれを????と頭の中がグルグルしたんですが、結局、あんな風なんですか???シーツなんか取り替えちゃって、一応成功しました、みたいに片付いてるけど、どー考えたって無理でしょー!現実的ぢゃないーっ!!って思いましたが、やはりこれはおフランス映画でしかも、女の子のお話。リアリティーを求めるんじゃなくて、観念的なものに留めておくべきなんですね。そうですよね。

観念的、と言えば、ラストシーンがまさにそうでしたね。水面に浮かぶ、悲しみに打ちひしがれた二人の少女。このシーン、大好きです。傷ついたけど、致命的じゃない。大人になるための試練みたいなものだから、私たちはきっと、立ち直ってもっと強くなれる。そう暗示されているようで、この作品全体のカタルシスがそこに凝縮されている。そんな風な印象を与えるラストで感動しました。音楽も素敵です。

シアマ監督とフロリアーヌ役の女優のインタビュー特集。裏話など充実した中身で濃いです。
「ネタバレ注意!」となっておりますが、このブログ記事自体がすでにネタバレですので...。

インタビュー記事 『水の中のつぼみ』セリーヌ・シアマ監督&アデル・ヘネル
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by marikzio | 2010-08-02 11:39 | Movie | Comments(0)
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