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Anne Pigalle "Every thing could be so perfect..."

輝ける80年代。四半世紀後の現代に今もなお、強烈な影を刻みつけている当時のイギリスの音楽シーンの中でとりわけアイコン的存在だったレコード・レーベル、ZTT。そのZTTブランドから1985年、フランス出身の新星として世に送り出された女性歌手、アン・ピガール。
ノスタルジックなシャンソンがZTTらしく絢爛豪華にアレンジされ、フランス語訛の強い英語との絡みが絶妙。アンニュイさと官能、まさに聴く者を異世界へと誘う魅惑的な作品です。

Anne Pigalle \"Every thing could be so perfect...\"_b0069502_1855631.jpg1 Why Does It Have To Be This Way
2 Via Vagabond
3 Looking For Love
4 He! Stranger
5 Intermission (The Gods Are Bored)
6 Souvenir D'Un Paris
7 A Crack In The Ocean
8 The 1000 Colours Waltz
9 He! Stranger ? One
10 He! Stranger ? Two
11 Stranger (Than Fiction)
12 Johnny
13 Why Does It Have To Be This Way (Single Version)
14 Faut - Il Vraiment Que Ce Soit Comme Ca
15 Why Does It Have To Be This Way (Piano Version)
16 Like We Do


この人、一般的にはアン・ピガールで通ってますけど、ほんとはアンヌじゃないのかなぁ?Pigalleと言うのも、本名ではないのではないでしょうか。
私はこのアルバムをリアルタイムで聴いたわけではありません。日本でも話題になって、来日&テレビ出演も果たしていますが、名前だけは知ってる、という程度でした。当時は英米に憧れはあってもフランスは小洒落た嫌みなイメージがあって、興味なかったんですね。
かなり後になってから、偶然に『青春の彷徨』(邦題)を聴いたのですが、その音世界の豊かさに全身に衝撃が走りました。
特にびっくりしたのが、この曲です。そうです、CMに使われてましたよね。何のCMだったかは記憶にありませんでしたけど。『異邦人』という邦題がついていました。


パリの駅(恐らく北駅?)に降り立った一人のフランス女。"ジャン"という彼と話すべく電話をかけますが、生憎彼は不在のよう。このシチュエーションがいかにもベタなんですよね。もう20年以上も前と言えど、イギリス人もフランス人についてこんなシチュエーションを想定してるもんなんだ〜、と妙に笑えたりして。
そして、女はいつしかパリ随一の歓楽街ピガールへと迷い込む。"Anne Pigalle"のピガールって、この有名な街の名前とかけてたんでしょうかね。ほら、パリと言えばピガールでしょ、わかりやすいでしょ、みたいな。ならば、アン・ブローニュとか何か森にちなんだ名前でも良さそうな気がしますが、それじゃ、あまりにもコア過ぎますかね。
とにかく古い映画のような1シーンから一転、猥雑な覗き部屋へと舞台は移るのですが、結末はあまりにも安易なような...。まぁ、いいんです、いいんです。ビデオ・クリップなんてストーリーよりイメージが勝負ですから。

とにかく、私が初めてこのアルバムを聴いた時はすでに廃盤になっていて、入手困難でした。しかも、これを見つけたのが市立図書館の視聴コーナーでしたので、ダビングしたくてもさせてもらえなかったのですね。しょうがなく、何度か通って聴くしかありませんでした。それから長らく『青春の彷徨』は自分にとって幻の名盤だったのですが、今年に入り、枚数限定の復刻盤が発売された、という情報をもらいました。(jasouyouquiさんmerci!)
オリジナル盤の収録曲は8トラックなのですが、日本の復刻盤は8トラック追加されています。これは"He! stranger"と"Why Does it have To Be This Way..."の12インチシングルに収録されていたリミックスものと新曲。同じ曲が延々と続くので後半は冗漫な感じがしました。でも、リマスターされた綺麗な音質で復活したのは感激です。
自分は何と言っても "Via Vagabond"。最初聴いた時は鳥肌ものでした。"Souvenir D'un Paris"とかフランス語で歌ってるものはやはりいいですね。当時は未知の世界のページをめくってるような新鮮さがありましたけど、冷静に聴いてみると、メロディー・ラインは典型的な古いシャンソンですよね。そして、歌がさほど巧いわけではない(爆)。ちょっと投げやりで乱暴な歌い方です。「20世紀のエディット・ピアフ」が当時のコンセプトだったそうですから、意図的な部分もあったのでしょうけど、それにしても力不足は否めません。しかしながら聴く者を一瞬にして魅了し、虜にしてしまうような力があるのですから、極めて完成度の高いアルバムと言えるでしょう。今も色褪せない輝きを持ってると思います。ところが、この"Every thing..."というタイトルとは裏腹にセカンドがリリースされることはなく、アンはアメリカに渡り、音楽シーンからは遠ざかってしまいました。
Anne Pigalle \"Every thing could be so perfect...\"_b0069502_1875284.jpg

Anne Pigalle \"Every thing could be so perfect...\"_b0069502_18234820.jpgこの度の日本盤リイシューがまことに秀逸で、音楽ジャーナリストのイアン・ピールのインタビュー(原文&翻訳文)と高橋健太郎氏のライナー・ノーツを読むことが出来ます。そこから一発屋で終わってしまった謎の女性アン・ピガールのその後の経歴と現在、そして彼女が当時を振り返って「あの頃は私も若くて何もわかってなかった」と語るなど、生身の人物としての触感が感じ取れるようになっていて、実に興味深いです。音楽にすっかり興味を失ってしまった彼女が米国で知り合った男性と「一緒に映画を創ろう」ということになったのに、その彼はアンが母国に帰省している間に自殺してしまうなど、ZTT時代以上に数奇な運命が彼女に起こったそうです。
さて、恐らく齢50前後になっているかと思われるアン・ピガールですが、写真家、画家、官能詩人として幅広い芸術活動をされているそうです。今はロンドンと故郷パリを行き来しているような生活でしょうか。
上の写真は2006年に撮影されたようですから、25年前とあまり変わってないですね。そう言えば、ZTTレーベルで同じような時期に活動していたフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの元ボーカル、ホリー・ジョンソンも画家として活動してますね。
彼女のアートの主題はほとんどがエロティシズムのよう。ピガール広場のエロティシズム博物館に陳列されそうな作品ですね。この表現者として追求し続ける姿勢、やはり興味深い女性なのだと確信しました。

Anne Pigalle \"Every thing could be so perfect...\"_b0069502_18322629.jpg

そして、何と彼女は音楽活動も再開してます。
新作"Amerotica"はオフィシャル・サイトのみで販売。MY SPACEでは一部視聴も出来ます。
Pigalleさんだけに相変わらずピガール街が登場します...。昔の妖しい短編映画みたい。



Anne Pigalle site officiel

Anne Pigalle MY SPACE
by marikzio | 2009-02-28 18:08 | Other Music | Comments(0)

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