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-Le Temps Qui Reste- by Francois Ozon
突然の宣告、「余命3ヶ月」。
青年ロマンが自分の運命を受け入れ、自ら選んだ死の迎え方。"Le temps qui reste"(残された時間)の中で、彼が残そうとしたものは?
若き名匠、フランソワ・オゾンが死をテーマにした3部作のうちの1作。

邦題 『ぼくを葬る(おくる)』
監督 フランソワ・オゾン
出演 メルヴィル・プボー、ジャンヌ・モロー
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31歳のロマン(メルヴィル・プボー)はパリで活躍するファッション・フォトグラファー。恋人のサシャ(クリスチャン・センゲワルト)と同棲中であり、公私とともに充実した日々。
撮影中に目眩に襲われたロマン。検査の結果、彼は末期ガンに冒されており、余命3ヶ月と宣告されてしまうのです。
ロマンは自分の命が残り少ないことを愛するサシャに告げることができない。いきなり別れを切り出し、傷ついた恋人は彼の元を去って行きます。
自分の家族と久しぶりに顔を合わせることになったロマン。ゲイであり、結婚もせず、子供も作らないロマンを受け入れている家族でしたが、彼は姉のソフィー(ルイーズ=アン・ヒッポー)と仲違いして何年もぎくしゃくした関係にありました。
乳飲み子を抱えながらも、離婚したばかりのソフィーは振り子のように心が揺れ動いている。日頃から確執を抱えていた姉と弟の間に交わされる言葉は針のような刺々しさがあって、二人は取っ組み合いの喧嘩にまでなってしまいます。
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彼は父にも母にも自分がもうじき死ぬことを打ち明けられませんでしたが、親友のように仲が良い祖母ローラ(ジャンヌ・モロー)にだけは知らせたいと思い、彼女に会いに行きます。
「どうして私には打ち明けたの?」と問うローラに、「自分と一緒でもうすぐ死ぬから」と答えるロマン。辛辣だけど、切ない言葉です。
そして、ローラが孫に向かって言う「今夜おまえと一緒に死にたい」という台詞は泣けてしまいます。

朝早く、森の中へと出かけて行くロマン。
そこには幼き日の自分と姉がよく遊んだ思い出の小屋が。子供の頃は姉弟、とても中が良かったんですね。二人が教会の中である悪戯をしかけたり、無邪気に遊び回る光景が何度かフラッシュバックします。特に、本編の中で何度も登場する巻き毛の男の子は幼少時代の彼なのです。その登場回数というか、幼き日の自分に対する主人公の執着ぶりが尋常ではありません。あんなに仲良しだった姉ともいつからこじれるようになって行ったのでしょうか。
ロマンが家族と会った日に、父親と車の中でふたりきりになる場面が出て来ます。このお父さんは、どうやら自分の妻との間に横たわる溝を見て見ぬふりをして何年も過ごしてきたふしがあり、息子もそのことに気づいています。
おじいさんが死んだ時、ローラおばあちゃんは、自分の息子、つまりロマンの父を置いて家を出て行ったことについて言及しています。
「あの時、周りの人間はみんな自分を非難したけれど、自分はそうするほかなかった。ふしだらと言われても逃げ出さなければ、自分自身が壊れてしまうと思ったから。」
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ローラの家に向か途中で、ロマンはある食堂のウェイトレスと言葉を交わします。そのマダムの名はジャニイ(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)。夫が働くデリカテッセンにロマンが来ていたところに、彼女が偶然やって来るのです。
ジャニイはロマンを一目見た時から、ある思惑を心に抱いていました。そして、その思惑を二度しか会っていない彼に打ち明けるのです。ジャニイの夫は不妊症。それでも子供が欲しかった彼女は子宝を授けてくれる人を捜していたのです。それは夫も承諾済み。
「お金はあるわ。あなたはまだ若いし抵抗がないでしょ?」
大胆不敵としか言いようのない依頼。渋る様子のロマンに「SIDA?」(エイズなの?)と単刀直入に聞くジャニイ。かなり変な人ですね。これはオゾンが言わせてるのですが、「ゲイなの?」とは聞かないんですね。ロマンも申し出を断る理由に「子供が嫌いだから」とはぐらかしてるし。
オゾン作品の作風といえば何と言ってもGay風味。この作品のテーマはゲイじゃないけれど、主人公はホモセクシュアル。ベッドシーンもあれば、アングラなゲイクラブをうろつく場面もあります。ロマンは結果的にはジャニイ夫妻に協力することになって、夫立ち会いの元で、ジャニイと結ばれます。しかし、本来の性向が性向だけに、ついつい夫にディープなキスをしてしまうロマン。夫も夫でその接吻を受け入れてるところが、やはりオゾン・ワールドなのでした。

後半は病状が進んで、死の恐怖と名状しがたい孤独感が主人公の心を蝕んで行く。彼はこれまでの時間を取り戻すかのように、姉と和解し、元彼のサシャの仕事の世話をしたりする。死ぬ前にもう一度抱き合いたいと思い彼を誘ったりしますが、仕事をもらったお礼として寝るみたいで嫌だとサシャはこれを拒否。ロマンは自分が生きた証を残したくて、ジャニイに自分の子供を産ませる決意をしたのかも知れません。自分の遺産をまだ見ぬ子に託すよう法廷手続きまで取りますが、そこでジャニイがまた図々しく聞くんですね。
「生まれて来る子は早死にするのでは?」
「大丈夫。ガンだから。ただのガンだ。」と淡々と答えるロマン。

終盤になると、プボーの容貌と演技は壮絶を極めます。末期ガンの患者らしく、頭髪を刈り、激やせした様相は、前半の魅力あふれるイケメンぶりとはほとんど別人。鳥の足みたいに細くなった脚が痛々しくて直視できません。
華やかな世界に生きてきた青年が化学療法を拒絶し、わざわざ一人孤独に死んで行くことを選んだ経緯は私にはよくわからなかったです。誰に気付かれることなく、明け方の海岸で主人公が一人死んでいたラストは確かにドラマチックではあるけれど、マッチ棒みたいな男が付き添いもなく、一人列車に乗って海まで行き(瀕死の患者にそんな体力があるだろうか???)、家族連れや恋人たちでごった返すビーチで一人ゴザ敷いて座ってる図が自虐的過ぎました。...って、今にも死にそうな人がいるのに、誰も気にとめないんかいっ!
オゾン映画って、よく海が出て来ますが、主人公が死を迎える場所に海を選んだのも、ちゃんと意味があるんでしょうね。
主演のプボーとジャンヌ・モローの絡みが良かったです。カルラ・ブルーニの姉、ヴァレリアの役どころも、ちょっとエキセントリックながら、切実な思いを秘めてる目線が印象に残りました。
やっぱりオゾン作品は好きですね。

日本語サイト 「ぼくを葬る」

フランソワ・オゾン公式サイト francois ozon site officiel
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by marikzio | 2007-06-12 17:16 | Movie | Comments(6)

-5×2- by FRANCOIS OZON
あるカップルが経由する5つの場面。
『離婚』から『出会い』へと逆行するうちに、夫婦の間に横たわる謎が解かれていく、という恋愛ミステリー。オゾン映画と言えば、"同性愛"がお家ゲイ(Rimbeauさんから拝借)なんですが、今回のテーマはヘテロ愛。
...と思いきや、奥さんの後ろにまわされた旦那さんの手。この"お尻"に対する執着がカギだったんですね。
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邦題 『ふたりの5つの分かれ路』
出演  ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ステファン・フレイス
監督・脚本 フランソワ・オゾン
2004年 フランス

注意! 激ネタばれ!!!


30代のカップル、ジル(ステファン・フレイス)とマリオン(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)。
物語は二人の離婚調停場面から始まります。一人息子がいるが、すでに別居状態の二人。無事に(?)離婚成立した後で、なぜか二人は同じ部屋の中にいました。
「カーテンを閉めようか」と訊ねるジルに対して、「いいえ」と答えるマリオン。
ジルはジャケットを脱ぎ始め、マリオンは少しの間ためらいますが、彼に続きます。
えっ、離婚したばかりの二人がベッドイン???
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マリオンはすぐにやめようとするんですね。「やっぱり、ついて来なければ良かった。」
しかし、それを遮って行為を無理矢理続行するジル。あまりの苦痛に悲鳴を上げるマリオン。彼女の目には涙が...。どうやら、女性としてされたくないことを元夫にやられてしまったようです。
やっぱり変態オゾン様。今回は男女の愛だと油断してたのに、しょっぱなからカマしてくれます。
その後、バスルームから出てきたマリオンは、ベッドにはジルの姿はなく、部屋の窓が開けっぱなしになっているのにギョッとします。
「自殺したと思ったんだろ?」彼は部屋の片隅に身を潜めていました。
「裸でセックスできて満足だろ?」と謎めいた台詞を吐く元夫。
「君の勝ちだ」
「勝ち負けじゃない。終ったのよ。」
「いつも君が正しい。おわりだ。」

「やりなおせないか?」
そして、一人部屋を出て行くマリオン。

場面は変わって、家族として暮らしていた頃のアパート。
仕事から帰ってきたばかりのマリオンを待っていたのはジルと幼い一人息子。シャワーを浴びたい、と言うジルに対して、マリオンは化粧を直したいからちょっと待って、と言います。鏡の前でドレスアップしているマリオン。息子を寝かしつけたあとで、ジルはバスルームへ直行。どうやら、これから出かけるか、来客があるらしい。
ドアの呼び鈴が鳴って、ゲストを出迎えるマリオン。今夜の客はジルの兄クリストフ(アントワーヌ・シャピー)で、彼の恋人はこれから来る予定だと言う。今夜は夫婦と兄とその恋人の4人でパーティをすることになっていたのです。
クリストフの恋人はめちゃめちゃ若い美青年。おじさんのクリストフとは、誰がどう見たって不釣り合いな相手。その彼が今までいろんな相手(♂)に身をまかせてきたと、奔放な告白をし、それを笑顔で見守るクリストフ。
そんな中でふとジルが口を開きました。「浮気はホモの専売特許じゃないんだぜ。」
なんと、この場で自分の乱交体験話を披露。その現場にはマリオンも居合わせていたのですが、彼女は参加しなかったのです。そして、その時、初めて男性体験をしたと語るジル。「兄貴の気持ちがわかったような気がしたよ。」
言うまでもなく、このエピソードが二人の未来を決定するものとして、暗示されています。この時点ですでに二人はセックスレス・カップルらしい。

更にタイム・スリップして、マリオンが出産する場面。
妊婦の定期健診に来ていた彼女に、異常が見つかって、「ただちに陣痛を起こさなくては」と宣告されます。急遽、人工的に出産させられることになったマリオンは夫に連絡を。
非常事態だというのに、ジルは敢えてレストランでゆっくりランチを取り、渋滞でもないのに、車の中に居座って時間を潰します。携帯には何件もの留守電メッセージが。出産に直面している妻からのものであることは言うまでもありません。ようやく彼が病院に到着した時は、赤ん坊は生まれた後でした。
保育器の中の弱々しい未熟児が自分の息子だと、どうしても実感できない風のジル。自分が父親になってしまったことすら認めたくないように見えます。
ここで夫婦の間に溝が出来ていることが伺い知れるんですが、妻を妊娠させているんだしなぁ、いつから隙間風が吹くようになったんだろう???
と思っていたら、マリオンご懐妊の秘密は新婚式初夜に隠されていたのです!...って、私の深読みかも知れませんが。

二人の出会いはカリプソ島でのヴァカンス。
恋人ヴァレリー(ジェラルディン・ペラス)と来ていたジルは、仕事上での顔見知りだったマリオンとビーチでばったり遭遇。彼女が一人旅だと言うので、彼は3人でごはんを食べようと誘います。
マリオンはお一人様ヴァカンスだったんですね。ホテルにチェックインする時にルームナンバーが213だったのに、「あらっ!」と声をあげます。コンシェルジュが「迷信を信じます?」と聞くのに対し、「いいえ」と答えるエピソードがあるんですが、そんな迷信があるんですね。具体的な内容は知らないんですが。
ヴァレリーは美人だけれど、ちょっと高慢。お一人様で食事している女性を「ちょっと哀れね」と言ったり、マリオンにも「一人で嫌じゃない?」と露骨に聞いたりする。マリオンは失恋して4ヶ月たったばかりで、まだ新しい恋を始める気になれないのだと言う。
この旅はジルとヴァレリーにとっても分岐点となる旅でした。二人の間に不協和音が生じつつあって、そこに登場したマリオン。仕事上、顔をあわせるだけで、彼女のことはほとんど知らない...。
「魅力的な人ね。」やや皮肉な調子で評するヴァレリー。「あの子に欲情してるんでしょ?」
「そうだ、彼女に欲情している。」そう言いながら、ヴァレリーを後ろ向きにするジル。二人の間に何が起こったのかは、はっきりわかりませんが、次の朝、一人で山登りをするヴァレリーの姿が。
そして、ジルはマリオンと時間を過ごしていたのです。
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b0069502_11192784.jpgマリオン役を演じたヴァレリア・ブルーニ・テデスキは北イタリア、トリノの名門ブルーニ家の出身。
妹は元スーパー・モデルで歌手としても大成功したカルラ・ブルーニ。
映画デビューは1987年で、「君が、嘘をついた」、「愛する者よ列車に乗れ」など出演作多数。
「今まで男たちの被害者的役が多かったが、今回は初めて幸福や欲求を求める、ごく普通の女性を演じることができた」と語っていますが、この作品だって、ある意味、充分被害者なんじゃないの?と個人的に思ってしまいました。
でも、ジルとの出会いや結婚、出産、別れの決意など、自分の選択で歩んで来た道は、一人の女として生きた証なのです。一人ビーチで所在なげだったマリオン、男を後に遠ざかって行くその背中に力強さと共感を覚えます。これからも自立した女として、母として前を向いて進んで行って欲しい、とエールを送りたくなるのは、私だけではないと思います。
妹カルラのような華やかさはありませんが、雰囲気的に好きな女優さんです。それに、とっても素晴らしいプロポーション!「ぼくを葬る」でも出演しているそうなので、是非ともオゾン作品の常連の顔になって欲しいです。
夫役のステファン・フレイス、顎髭で時間の流れを出していました。離婚直後なんて、ゲイのおじさんそのものの風貌になってましたね。ちょっとヴァンサン・カッセルに似ているような気がするんですが...。インタビューの中で「ジルはとても苦しんでいるんだ。マリオンは強く、ジルは傷つきやすいけれども、彼は性の認識について、くよくよ悔やんではいない。結婚が破綻して、消えていくのにも、苦しみながら対峙しているのだから、彼は意気地無しではない。」と語っていました。

この映画を見終った時、正直、何が言いたかったのかよくわかりませんでした。
性の不一致で心が通わなくなって、離婚の道を選んだカップルの話なんて珍しくもないし、特別ドラマチックな展開があるわけではないし、時間を遡るという手法も特別斬新なものとも思わないし。
まぁ、オゾン映画には「何だったんだろう?」というモヤモヤ感がつきものであります。彼のコメントや役者のインタビューを読んで初めて、「ああ、そういうことだったんだ。」と納得することの方が多いです。
で、結局、最後には好きになっちゃった作品でした。

画像元 Francois Ozon site officiel

日本語サイト 「5×2 ふたりの5つの分かれ路」 オフィシャルサイト
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by marikzio | 2006-10-04 09:22 | Movie | Comments(2)

-La Petite Mort- by Francois Ozon
『ぼくを葬る(おくる)』が世界中で上映中のフランソワ・オゾン。
青森では、上映されておらず(7月に八戸フォーラムで上映されるらしい、というRimbeauさん情報もありますが)、私は未だに観ていないのですが、若くして死を宣告されたフォトグラファーが残された時間の中で、自分を冷静に見つめ直し、行動する、という内容のようです。
オゾンはシャーロット・ランプリング主演の『まぼろし』でも夫の突然の死を受け入れて行く女性の姿を描いていて、『ぼくを〜』は"死"をテーマにした3部作の第2弾なのですね。

しかし、彼は初期の頃から"死"を題材にした作品を作っていたのです。
"La Putite Mort"(小さな死)
1995年作品。26分。
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主人公、Paulは新進?のフォトグラファー。
生まれてすぐ、自分の父親に「なんて醜い顔だ。まるでモンスターのようだ。」と言われてしまい、幼少の頃から父親とは希薄な関係のままで育って来たらしい。赤ん坊だったのだから、何を言われても知りようがないと思うのですが、家族の誰かがわざわざ彼に言ったのでしょうか?

b0069502_14504479.jpg恋人、Martial(♂)と同棲中。(ゲイ的設定はオゾン監督の定番中の定番)
頻繁にお互いの姿を撮りあったりするけれど、何故かこんな(→)写真ばっかり。
そう言えば、"オー○ズム"って、"小さな死"という意味がある、と以前聞いたことがあります。タイトルの「ら・ぷちっと・もーる」って、絶頂のことを言ってるのかしら?
オゾン様ったら、ほんと変態ちっくなのよね、もうっ!

シャワールームで朝からイチャついているところに、ポールの姉がアパートにやって来ました。
自分たちの父親が危険な状態にあり、今から父の入院している病院へ駆けつけるため、弟を迎えに来たのです。
いかにも風呂上がりの格好で姉を迎えるポール。彼に続いて、登場するマーシャル。
「はじめまして」てな感じで、挨拶をするけれど、腰にタオルを巻いたまんまの半裸姿!!!
「何なのこいつは!?」と言いたげな表情がお姉さんの顔を横切ります。
「2分で支度するから待ってて。」とポールは寝室に消え、部屋に残される姉とマーシャル。
部屋の壁には二人の絶頂写真がいっぱい。「いい写真ね」とお姉さんは皮肉を言い、「別に私は今さら驚かないわ」。

白い壁だらけの病院。
廊下に置かれたベッドに寝ている患者に戦慄するポール。向こうの病院って、ごく当たり前に廊下に患者さんを置いてるみたいですよね。
病室の前で姉が手招きするも、怖じ気づいて中に入ることができない。思い切ってドアを開けると、そこには上体を起こした父親の姿が。
しかし、彼の口から発せられた思いがけない言葉。「ボンジュール、ムッシュー」
初対面の相手と握手を交わすべく、差し出された右手にポールの心は傷つきます。「父さんは自分を認識していない」
「やっぱり自分は実の父に愛されていなかった」という思いを強くした彼は「父さんの病状は重く、わけがわからなくなっているのよ」と姉が呼び止めるのも聞かずに、病院を飛び出してしまいます。

しかし、次の日、ポールが取った行動は少々、常軌を逸していました。
カメラを持って病室に現れたポール。誰もいないのを見計らって、意識のない彼に向かってシャッターを押します。それだけならともかく、布団をはぎ取って、父の全裸写真を何枚も獲り続けたのです。何かに憑かれたように...。
「あなた、なんてことをしてるのよ!」突然現れる姉。
ヒステリックになって、カメラを取り上げようとする彼女の手を振り払って、帰宅したポールは、自宅の暗室で現像に取り掛かります。
現像液の中で、目をカッと見開いた父親の顔が浮かびあがります。昏睡状態の彼はずっと目を閉じていたはずなのに、息子を見つめる瞬間があったのです。
そして、次の日、父の死亡を知らせる姉の電話。
彼が息を引き取ったのは真夜中。それはポールが父の写真の目をくり抜き、お面のように自分の顔に当てがって、鏡を眺めた"あの"瞬間だったのでした。

疎遠に感じながらも、肉親の死を目の当たりにした青年の心象風景。愛されたかったのに、愛してもらえなかったと感じる哀しみ。それでも、彼が逝ってしまう前に、その姿をフィルムに収めたい。父の全てを。自分なりのやり方で。
そして、父親が幼児だった自分にキスしている写真を発見している場面で映画は幕を閉じます。
不思議な余韻を感じさせると同時に、「なんだこりゃ???」という気持ちがまとわりつく作品。理解できるようで理解できない。この「なんだこりゃ感」が結構好きだったりもするんですけど。
これはこれで評価が高く、グルノーブル映画祭でグランプリ受賞。横浜でも公開されてるんですね。
ちょっと抽象的な小品だった本作に比べ、『まぼろし』や『ぼくを葬る』はストーリー性が高まって成熟した感じを与えます。

一癖も二癖もある展開や映像センスのため、一部のコアな映画通にしか知られてなかったオゾンなんですが、今や欧米のみならず、メキシコやブラジル、シンガポール、タイなど、すっかりワールドワイドな監督さんになってしまったんですね。
メジャーになって、ややおとなしめにはなって来たものの、やはりオゾン様のお下品世界は健在のようです。
でも、彼の作品に出演する俳優や女優さんたちって、「今度は何をさせられるんだろう?」って内心ヒヤヒヤしないのかなぁ?

Francois Ozon Site Official
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by marikzio | 2006-06-19 15:32 | Movie | Comments(2)

『変態村』が気になる
先々週、上京した時に日比谷シャンテ シネで「ブロークバック・マウンテン」を観たのですが、ネットで情報チェックした際に、22日から、フランソワ・オゾンの「ぼくを葬(おく)る」が上映予定になっていて、歯がゆい思いをしたことは先日の記事に書いていますが、「ブロークバック・マウンテン」を観に行った時に「ぼくを〜」の予告編を観ることができました。
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パリで活躍する32歳の男性フォトグラファー。ルックスと才能に恵まれ、充実した毎日を送っていた彼に突然突きつけられる死亡宣告。不治の病に冒され、余命3ヶ月と言われた彼が残された時間の中で残そうとしたものとは?
本作は「死についての3部作」シリーズの2作目。
1作目の「まぼろし」はシャーロット・ランプリング扮する人妻が海岸で突然姿を消した夫の死が認められず、空想の中で夫と生活をともにする、というミステリアスな作風で世界的な成功を収めました。これは「愛する人を失った者がどのように喪失を受け入れ、蘇生していくか」が語られていましたが、今回、死に直面するのは自分自身。
予告編の中では自分の恋人(♂)に対して主人公が冷たくあたったり、おばあちゃん(ジャンヌ・モロー!)が「おまえと一緒に死にたい」と言う場面があったりして、ちょっと涙ぐんでしまいました。
どんなに"お涙頂戴"な映画やテレビでも泣くことなんか絶対になかったのに、予告編でホロリとするほど涙もろくなってしまうとは...。これってトシのせいなんでしょうか?(汗)
あともう少しで始まるんですよね。うぅぅ。

で、シャンテ シネでは上映されてないのですが、いろんな映画のフライヤーがご自由にお持ち帰りできるようになっていて、その中で一際目をひく真っ赤なチラシがありました。
ファブリス・ドゥ・ヴェルツの
『変態村』!!!!(原題『CALVAIRE』)
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「ようこそ、変態村へ。」
こんなに愛してもまだ足りない。3月18日(土)、戦慄のロードショー。 in ライズX
と、あるから、とっくに終ってるんですね。日本の公式サイト見ても青森で上映される予定もないみたいだから、WOWOWとかで放映されるまで私が見るチャンスはない...。ああ残念だ、残念だ。

どーいうお話かと言うと、ハンサムで魅力的だが売れないミュージャンの青年。その彼が山の中で道に迷ってしまい、ある山村に辿り着く。そこに住むおじーちゃんのご厄介になりますが、そのおじーちゃんと来たら、彼が死んだ妻にそっくりだと思い込んで、青年に終始つきまとうことに。そのしつこさに嫌気がさした青年、脱走を企てますが、そのおじーちゃんから「絶対に踏み込んでは行けない」と言われていた禁断の村に入ってしまうのです...と言うホラー・サスペンスのようです。
邦題はキワモノ的、画像を見ると主人公が血まみれになっていたりして、これまた恐ろしげなんですが、ちょっと気になってしまいました。
美し過ぎるがゆえに受難する青年役のローラン・リュカがステチ。
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by marikzio | 2006-04-19 17:22 | Movie | Comments(4)

-LES AMANTS CRIMINELS- by Francois ozon
b0069502_21385979.jpg1999年、フランス。邦題「クリミナル・ラヴァーズ」

夜の高校。クラスメイトのサイードがいるシャワー室に踏み入れるアリス(ナターシャ・レニェ)。日頃からアリスにご執心だったサイードは彼女に誘われるままに床のタイルに転がります。
床で抱き合う二人の背後にそっと現れるリュック(ジェレミー・レニェ)。サイードの肩越しに弟と目線を合わせ、合図を送るアリス。リュックはナイフを取り出し、姉のクラスメイトの背中を動かなくなるまで切りつけるのでした。
血まみれのバスルーム。包んだ死体を車のトランクの中へ運び、森の中に死体を隠すために、二人は逃避行の旅へと出かけます。

途中、通りかかった宝石店を襲い、金品をせしめたあと、ホームセンターでお菓子を万引きしたり、土を掘るための道具を仕入れる姉弟。二人は共犯なのですが、どちらかと言うとわがままな姉のアリスが主導権を握り、気弱な弟のリュックが仕方なく言いなりになっている、という主従関係。
道に迷いながらも何とか山中に辿り着き、殺害したサイードを埋めて隠しますが、またもや道がわからなくなり、乗って来た車までも見失ってしまうのでした。

路頭に迷う二人。しかし、リュックは幸運にも男がたった一人で住んでいる古びた山小屋を発見します。すぐさま姉の所に戻り、「あの男の家から食べ物を盗んでこよう」と持ちかけます。彼らは男の小屋に忍び込み、テーブルにあった水と食べ物に喰らいつくのですが、森の男(ミキ・マノイロヴィッチ)に見つかってしまいます。
男に捉えられた二人は地下室へと閉じこめられ、なんと、その部屋には二人が埋めたハズのサイードの死体が横たわっているではありませんか。
二人の運命はいかに...!?

「これって、ホラー?」
いいえ。これはフランスの奇才、フランソワ・オゾンによる現代版「ヘンゼルとグレーテル」。お伽話をモチーフにした殺人と逃避行に走る現代カップルの物語。
アリスとリュックは姉弟ですが、二人は近親相姦な関係。「自分に欲情したから、サイードを殺そう」という姉の突拍子もない申し出に抵抗していたリュックですが、学校で姉にキスするサイードに嫉妬心が燃え上がって犯行を決意するのです。
お菓子の家には住んでいないけれど、森の中で暮らす男は死体を口にし、弟のリュックにばかり関心を持ちます。

「8人の女たち」や「スイミング・プール」で今や商業的成功を収め、映画好きの間ではすっかり名前が通っているフランソワ・オゾンの初期〜中期にあたる作品。
当時はこのようなエグい(死語)作風で、「知る人ぞ、知る」という存在でした。この映画監督を知っていることを自慢したい、でも「こんな趣味があったのか」と思われそうで憚られる、そんな感じでしょうか。
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主演のナターシャ・レニェ、「天使が見た夢」という映画に出演し、金持ちの放蕩息子に弄ばれ、自殺してしまう、という役どころで幸薄い美少女のイメージがありました。今回も破滅的なキャラクターなんですが。
「8人の女たち」のオーディションも受けていたみたいです。結局は「スイミング・プール」のリュドヴィーヌ・サニェに決まってしまったけれど、またオゾン作品に顔を出して欲しいものです。
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by marikzio | 2005-01-25 22:39 | Movie | Comments(2)

-A Summer Dress- by francois ozon
b0069502_027279.jpgOzon好きのmarikzioが放つ第2弾は彼の初期の短編映画「サマードレス」(Une Robe D'ete 1996 フランス)を紹介いたします。
この作品で私は当時短編王と呼ばれていたフランソワ・オゾンのトリコになりました。

夏のヴァカンス。男友達と一緒にリゾート地にやってきた主人公の青年は楽しいはずなのにどこか浮かぬ顔。友人と一緒にいるのさえ煩わしくなった彼は「ちょっと一人になりたい」と友達を置き去りにして自転車を飛ばして海岸へと出かけていきます。
誰もいないビーチ。しばし静かな時間を楽しんでいた彼は一人の女性に声をかけられました。「あなた何歳なの?」煙草に火をつけながら問いかける彼女。青年は18だと答えると彼女も18歳だと言います。(でも絶対にそうは見えない)
少し会話しているうちに女性の方が「ねぇ、あの森へ行きましょうよ。」と言い出します。青年が何でと聞くと「メイク・ラブするのよ。うふん」
結局誘われるがままに森の中へ入って行く二人。実はそれが彼にとって「first time」だったのです、女の子とは・・・。
ところが、その後自分の服が盗まれていることに気づきます。「どうしよう、裸だ」愕然とする彼。彼女は笑い転げながら自分のワンピースを差し出します。(彼女は水着姿になっていました)
「こんなカッコじゃ帰れないよ。」
「だったら素っ裸で帰ることね。」
結局サマードレス姿で自転車を漕ぐ青年。すれ違う車が鳴らすクラクションに思わず照れ笑い。それでも何とか友達の待つコテージに辿り着いて・・・。

b0069502_0281135.gifこの映画の中で私が好きなのは何と言っても主人公の友達(彼?)が冒頭のシーンで披露する中性的なダンスです。私はここで笑い転げてしまいました。
そのダンスはオゾン公式サイトの中のここでちょっとだけ見ることができます。
これがまた本当に傑作なのです。パソコンの前で「あっはっは!」と笑ってしまうこと請け合いです。奥さ〜ん、Don't miss it!よん。

余談になりますが、フランソワ・オゾンは2002年に「8人の女たち」のプロモーションのために来日を果たしています。記者会見に臨んだオゾン監督はまだ若くてハンサムだったのでびっくりしてしまいました。こんなヘンテコな映画を創る人には見えません。まぁ、よく見るとどこか中性的なのですが。
彼はこれ以外にも多くの短編映画を発表して、一部の層から高く評価されていました。「Sous Le Sable」の成功でネーム・ヴァリューが上がり、カトリーヌ・ドヌーヴなどの有名な女優をたくさん起用するようになったりして、だいぶ一般的に知られるようになってしまいました。
それでも私がオゾン作品をこれからも愛し続けることには変わりないんですが。
画像元 フランソワ・オゾン オフィシャルサイト
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by marikzio | 2004-12-01 19:42 | Movie | Comments(5)

女はみすてーりあす! -SWIMMING POOL-   
b0069502_1612763.jpg数年前にWOWOWでフランスの映画監督Francois Ozon(フランソワ・オゾン)の短編映画「サマー・ドレス」を観てしまってから、私はすっかりこの映画作家に心を奪われてしまいました。
今日は彼の2003年の作品でカンヌ映画祭にもノミネートされた「SWIMMING POOL」を紹介したいと思います。

ロンドンに住むミステリー作家のサラ・モートン(シャーロット・ランプリング)。
彼女は出版会社の社長に自分の南仏にある別荘でゆっくり執筆してはどうかと提案されます。社長の申し出を受けることに決めたサラはフランスへと飛びます。
庭に大きなプールまでついているその別荘は閑静なたたずまいで、彼女は仕事も順調に進めることができて喜んでいましたが、そこに突然社長の娘だというジュリー(リュドヴィーヌ・サニェ)が現れます。若くて官能的で、サラとは正反対のジュリー。その存在を女作家は最初疎ましく思っていましたが、そのうち小説の材料としてこの若い女に興味を抱くようになります。ジュリーは色々な謎を秘めていたのです。反発し合っていた二人の女の間に奇妙な絆が芽生えつつありましたが、そこにある事件が起きて・・・。
ご覧のとおり、あれこれ想像したくなるような悩ましげなヴィジュアル。期待を裏切らずセクシーなシーンがいっぱいです。(別に煽っているわけではありません。)

青森在住の私は実はこの映画の日本語字幕版を観ていません。県内の劇場ではどこも「SWIMMING POOL」を上映しなかったので、私はまたもやamazon.frからDVDを取り寄せました。英語とフランス語のミックスで字幕のあるところは何とか読むことができたのですが、字幕がついてない個所はちんぷんかんぷん。それでも結構楽しめました。しかしミステリー物なので、やっぱりちゃんと日本語字幕で観たいです。
でも、日本語字幕でもやっぱりわからない部分があるのでは?と思います。特にラストのところなんか。一体どういうこと!?という終わり方です。

オゾン作品と言えば日本では「8人の女たち」(8 femmes)が一番有名ですが、その作品は私はあまり好きではありません。
「SWIMMING POOL」はちゃんとオゾンの毒が効いていたので、出来映えに大満足でした。
オゾンの最新作は「5×2」。
元スーパー・モデルで歌手として日本来日も果たしたカルラ・ブルーニのお姉さんである、女優のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ主演ということでそちらも楽しみです。

フランソワ・オゾンの公式サイト(仏)
「SWIMMING POOL」公式サイト(日本)
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by marikzio | 2004-11-28 16:50 | Movie | Comments(3)


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