-Factory Girl- by George Hickenlooper
アンディ・ウォーホールやボブ・デュランのミューズであり、60年代のファッション・アイコンでもあった伝説の女性、イーディ・セジウィック。
彼女のことは知らなかったし、アンディ・ウォーホールにもボブ・ディランにも特別な思い入れはなかったのですが、ポップカルチャー全盛だった70年代前後の独特の雰囲気に自分は興味があって、あの Chelsea Hotel も出てくるかも知れないという仄かな期待を抱いてこの映画を見ることにしました。
b0069502_21541762.jpg
邦題「ファクトリー・ガール」
監督 ジョージ・ヒッケンルーパー
出演 シエナ・ミラー、ガイ・ピアース、ヘイデン・クリステンセン


1965年、ニューヨーク。
サンタ・バーバラから画家をめざして上京した一人の少女。彼女の名はイーディ・セジウィック(シエナ・ミラー)。名門セジウィック家出身のお嬢様。ケンブリッジ美術学校を退学した彼女は知り合いのチャックを頼ってNYへ。
ある日、チャックとともに、とある画廊のパーティーに現れたイーディ。パーティーに来た目的は、あのアンディ・ウォーホルと知り合いになること。
類い希なる美貌の持ち主、イーディはそのモダンな雰囲気で周囲の注目を集めます。彼女に注がれる視線の中に一際熱くて鋭い眼差しがありました。その視線の主こそが泣く子も黙るアンディ・ウォーホル(ガイ・ピアース)。
「おお、何て素晴らしい娘なんだ...」
二つの人生が交差した、まさに世紀の瞬間。

アンディ・ウォーホル(1928年〜1987)は20世紀に誕生したポップアートの教祖。
『コカ・コーラの瓶』や『マリリン・モンロー』など、チープで庶民的なモチーフや奇抜なコラージュ、派手な色彩などを用いてアメリカの大衆文化を象徴するような作品を発表。これまでの『芸術作品』と呼ばれて来たものとは対極にあるような斬新でポップな画風で商業的な大成功を収めてしまう。まさに彼は20世紀カルチャーのテロリストであり革命児なのです。イラストレーションや写真の他に映画制作やロックバンドのプロデュースなどマルチに活動。そしてシンボルマークの金髪のカツラを被り、毎晩パーティ三昧の日々を送ったことでも有名。
まさに時代の寵児であったウォーホル。数々の有名人たちと親交があり、野心を抱く者たちはこぞって彼とお近づきになろうとしたのですね。人の心を巧みに操る術に長けていたという彼は人を自分の都合のいいように利用することもあったようです。それでも当時の若者たちにとってウォーホルは神に近い存在であり、彼の放つオーラたるや相当なものだったのでしょうね。

最初、イーディに目を止めた時、ウォーホルは何よりもまず、彼女の実家が大富豪であることに着目していました。
「僕の映画に出て見ないか?」
ウォーホルの作る映画は超実験的でポルノまがいと評されるような代物。彼は出会う人誰にでも言っていたと言いますが、無垢で世間知らずなイーディはこの言葉を真に受けカメラテストを受けるのです。
そしてこれが全ての始まり。ウォーホールのスクリーンに現れた妖精は瞬く間に反響を呼びます。前衛芸術家といつも連れ立っている謎の美少女をマスコミが放っておくはずがありません。行く先々でイーディーはカメラに取り囲まれ、その圧倒的な美しさと奔放な発言で話題を呼び、ヴォーグ誌のカヴァーを飾るなど露出が増えて行きます。
「ウォーホルの人気はイーディに支えられているのだ」という声まで飛び出します。
b0069502_2211765.jpg
ウォーホールを盲目的に崇拝するイーディはいつも彼と行動を共にし、唯一無二の親友のような間柄となります。しかし、映画を見る限り、二人の間に性的な関係はなかったらしい。ウォーホールがヘテロでなかったからでしょうか?
イーディは古い友人から一人の有名ミュージシャンを紹介されます。そのロックスターとはボブ・ディラン(ヘイデン・クリステンセン)。有名人という有名人は数多く見ていたイーディでしたがボブ・ディランとの出会いは衝撃的なものでした。二人は恋に落ち、一緒の写真が出回るようになってからウォーホルとの関係は次第にぎくしゃくしたものへとなって行くのです。
常に取り巻き連中や有名人に囲まれ、ご機嫌を取られ、尊大な性格のウォーホル。しかも、数々の映画を撮っておきながら、イーディには一切出演料を払わないという非道ぶり。イーディは何度もギャラを払うよう訴えるのですが、それに対して彼は何の誠意も見せません。
ウォーホルはイーディに対して複雑な思いを抱いていたのだと思います。チェコスロバキア系移民で父は炭坑夫という労働者階級の家庭に育ったウォーホル。母親にはあばた顔のことを常に言われ、貧弱体型のオタク的青年だったウォーホル。上流階級育ちで完璧な美貌のイーディは生まれながらにして彼にないものを持っていました。イーディを自分の被写体にすることで、ウォーホルは本来なるべき自分の姿を彼女に投影させていたのかも知れません。そして、同時に屈折した感情もそこにはあった。
イーディと熱愛中のボブ・ディランがある日、ウォーホルの聖地"ファクトリー"(アトリエ)を奇襲。自分にカメラを回してみろとウォールに要求するエピソードがあります。ロック・スターにトゲのある辛辣な言葉まで吐かれ、イーディの見ている前でウォーホルは何も言い返すことが出来ない。ここでの彼は世界的に有名で商業的に大成功しているセレブではなく、ただの怯えた気弱な少年になってしまいます。
恋人がウォーホルに搾取されていると思ったボブ・ディランはファクトリーからイーディを連れ出そうとするのですが、イーディはこれを断固として拒否。
「彼を見捨てられるわけないじゃない」と泣きながらディランに言い放つイーディ。彼女にとってウォーホルは精神的一卵双生児のような存在だったのかも知れません。
b0069502_22113322.jpg
何不自由のない裕福な家庭に育ったと思われているイーディですが、実は父親から性的虐待を受け、兄が自殺しています。写真映えするスリムなボディも実は拒食症と入退院を繰り返していた結果なのでした。ある夜のパーティでイーディは面白半分に薬を打たれてしまい、麻薬と酒に溺れるようになります。
高級マンションに住み、欲しい物は何でも手に入った輝かしい狂乱の日々はあっという間に通り過ぎようとしていました。ウォーホルは相変わらずギャラを払ってくれないし、実家からの仕送りも止められてしまいました。収入があるとすぐ使ってしまう浪費癖も災いしてイーディはたちまち困窮状態に。そんな状況にいる時でさえウォーホルはイーディを見て見ぬフリ。そればかりか、新しいミューズを見つけて来ては、そそくさと肩入れにいそしむ。人気も落ち目になり、イーディは今や過去の人となっていました。そして、自分を救おうとしたボブ・ディランさえ彼女の元を立ち去り、彼が他の女性と結婚したことを新聞記事で知るのです...。
手相を見た占い師が生命線が切れているのに驚いた、というわずか28年の刹那的な人生。壮絶なわりにはあまり重さを感じさせない作品でした。主演女優のせいでしょうか?でも、ガイ・ピアース扮するアンディ・ウォーホルの鼻持ちならないエゴイストぶりや繊細な一面が良く出ていて結構楽しめました。

タイトル『ファクトリー・ガール』にある"Factory"とは、ウォーホルやその仲間たちが創作活動したり入り浸ったりした工房。時代精神が渦巻くカオスな場所だったのですね。チェルシー・ホテルは後半に出て来ました。なんかこのホテルに滞在する人で幸せな人ってあまりいないような気がします。そう言えば、ここの住民でもあったウォーホルは、後にある女の人に銃撃されてますね。瀕死の重傷を追い何とか命は取り留めたのですが、その事件後、かつてのオーラが弱まって、存在そのものに輝きがなくなってしまった、と何かの本で読んだことがあります。
タイムマシンがあったら、60〜70年代 のNYに行って見たいです。

公式サイト(日本語) 「ファクトリー・ガール」
[PR]
by marikzio | 2008-07-03 22:07 | Movie | Comments(0)
<< 酒池肉林 Dégénération "Dégénérat... >>


marikzio=mahのブログにようこそ。私の好きな音楽や映画を紹介しています。
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
カテゴリ
ブログパーツ
最新のコメント
通りすがりです。 ペイ..
by 通りすがり at 23:57
https://www...
by Two-Tribes at 01:02
https://www...
by Two-Tribes at 23:51
シリーズ恋物語 「エロス..
by りゅう at 16:21
就小说艺术的角度而言,这..
by 安全套 at 01:47
I like the h..
by Cheap Snapbacks at 07:20
Hi there ver..
by Louis Vuit at 13:44
It¡¦s in poi..
by Pandora Charms at 17:50
millefeuille..
by marikzio at 14:01
あけましておめでとうござ..
by millefeuille at 20:50
☆Link☆
タグ
以前の記事
検索
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧