-Les Fruits de la passion- by Shuji Terayama
皆様、明けましておめでとうございます。ヽ(^0^)ノ
昨年に引き続き、今年もn'importe quoi!をどうぞよろしくお願いいたします。
自分の誕生日が4月8日というせいか昔から"4"と"8"に縁がありました。受験番号しかり、車のナンバーしかり、職員番号しかり...。2008年は自分にとって少しでも飛躍出来る年となればいいと思っております。
さて、2008年一番最初の出し物は青森が生んだ奇才、寺山修司作品です。
これは2007年の締めの記事として"狂い納め"にするつもりが、新年に持ち越してしまい、"狂い初め"となってしまいました。こんなんでいいのか私の2008年...。
まあ、新年早々こんなネタで心苦しいのですが皆さんの広いお心で、どうぞ最後までず・ず・ずぃい〜とお付き合いくださいませ。

**************

1920年代の終わり、激動の上海。
娼館"春桃楼"に漂着する謎のイギリス紳士とフランス女。紳士は自分の女を娼婦にして男たちの慰み物にしようという純粋な目的のために彼女を連れてここへやって来た。それはOに課せられた残酷な実験、愛の試練。
ポーリーヌ・レアージュ「O嬢の物語」の続編「ロワッシーへ還る」を原作にアングラの帝王、寺山修司が描く至高のデカダンス。
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邦題「上海異人娼婦館 チャイナドール」(1981)
監督 寺山修司
出演 クラウス・キンスキー、イザベル・イリエ、アリエル・ドンパール、ピータ


O(イザベル・イリエ)がステファン卿(クラウス・キンスキー)に捧げる愛は絶対的な忠誠。それも己の精神と肉体を全面放棄し、すべて愛人のものに帰属させるという究極的なもの。例え、そこに何が待ち受けていようとも、絶対に後悔などしないという確固たる意志で愛する男とともに海を渡りました。
そんな二人を迎え撃つのはマダム黒トカゲ(ピーター)。黒トカゲは値踏みするようにOを見つめます。「こんな上物、ほんとに私たちに預けていいの?」
ステファン卿がやって来たのはここ上海でのカジノ経営という目的もありました。その滞在中に自分の女を娼館に預ける、という思考回路が何とも理解し難いのですが、ステファン卿に言わせれば、すべてそれも「我々の愛の深さ」を確かめるための実験であり、それを承知したのもO自身なのだ、と黒トカゲに告げるのです。
「本人の意思と言っても、果たしてこのお嬢ちゃんが耐えられるのかしら?」
不敵な笑みを浮かべるマダム。「ここの店のしきたりを教えてやんな」
"春桃楼"で働く女達には3つの過酷なしきたりが課せられていました。
「客をえり好みした場合は101回の鞭打ち」
「客の要望を拒んだものは101日の食事抜き」(死んじゃうって)
「なぶり者の分際で神に助けを乞うたり、宗教的な行いをしたものは、伝染病患者やアヘン中毒者たちの慰み者にしてやる」
「Jamais!」と思わず呟くO。

この館は高級売春宿と言うよりも、サーカス団の見せ物小屋という風情。小人男とか全身白塗りの座敷わらしみたいな女の子、ブランコに乗った太ったおばさんなど奇異な人物ばかり。その他にも自分が大女優だったという過去の中に生きている愛染(新高けい子)や客の要望で鞭をふるう百蘭(高橋ひとみ)、自称聾唖者のさくら(山口小夜子)などエキセントリックな面々。
そんな混沌とした"春桃楼"でOは娼婦の一人となり、化粧を施され、寒々とした陰気な部屋へと通されるのです。そこがOの仕事場。
ステファン卿はOの他にもう一人愛人ナタリー(アリエル・ドンパール)を従えていました。ステファン卿はその愛人を抱く一方で、Oが客をとっている光景を部屋の裏から愛人と二人で覗き見するのに興じ、Oを鏡に縛りつけた前で、ナタリーと愛し合ってみたりもする。苦痛でしかない男の酷い仕打ちにも自分には今、何かが試されていると信じて無言で堪え忍ぶO。Oとステファン卿を結びつけているものは一体何?
そんなOを見つめる一人の青年がいました。
"春桃楼"の裏にある飯店の息子、王学(中村研一)。窓から外を眺める悲しげなOの姿に青年は恋をします。
"春桃楼"へOに会いに行っても、マダムに「ブロンド女は高いのよ!(←Oってブロンドなんですか???)」とすげなく言われ門前払いを受ける王学。
Oに謁見する資金作りのために闇のレジスタンス活動に加わることになりますが、それがステファン卿とOの運命を大きく変えることへと繋がって行くのです...。

Oはいつも怯えた顔をして、拾い主を待っている子犬のよう。
原作小説の中のOはキャリアを積んだパリ・ジェンヌであり、恋人ルネとも対等な関係にあったのですが、謎の館ロワッシーに連れて来られた日から従属と服従の本能に目覚める、という設定でした。物語の中盤でルネより年上で影響力のあるステファン卿に出会ったことによりOはルネからステファン卿の手に渡るのですが、寺山の「上海異人娼婦館」は登場人物にヒントを得ただけの全く別物の作品だと思います。
舞台をパリ郊外ではなく上海の場末の娼婦館に設定したのがいかにも寺山流。仏語、英語、日本語、時に広東語が飛び交う。寺山は西欧とアジアが混じり合う独特の無国籍空間を創りたかったのかも知れません。そしてオープニングに流れる寂寥感あふれる音楽が何とも貧乏くさい気分にさせてくれます。それがOの人生を暗示しているようでもあり。Oは幼い頃に父親に捨てられ、その父親像をステファン卿に重ねているようなふしがあります。
You Tube で検索してみたら、Oがその幼少時代を回想する象徴的なシーンが見つかりました。↓
You Tube Scene# Les Fruits de la Passion (1981)

少年時代から『神童』と言われた寺山、青森高校時代からすでに文才を開花させ周りの人々を驚嘆させていましたが、家庭環境にはあまり恵まれなくて、心のどこかに屈折していたものを抱えていた少年だったらしい。創作活動にのめり込んだのも、「自分をもっと認められたい」という自己顕示欲からくるエネルギーだったという一説もあるので、彼はヒロインOを「鳥籠の中に閉じこめられた不安でいっぱいの女の子」に置き換え、自分の少々時代と重ね合わせたかったのかな〜と勝手に憶測したりして。
もう一つ原作にはなかったのが水面下で広がっていたゲリラ活動。ステファン卿のカジノはテロリストに破壊され、彼は金も愛人も失います。そしてOさえも青年王学に心を動かされたと思いこんだステファン卿は青年を殺害し、自分も自殺しようとしますが未遂に終わり逮捕されてしまう。そして「O、お前は自由だ」というメッセージだけを残して、Oは突然解放されてしまうのですが、さて彼女はどこへ...。ここも原作とは大きく違うところ。
これって、寺山の「お前はそんなに弱い存在ではない。自分の足で力強く生きよ」という応援歌的なものが込められてるラストではないかと私は思いました。
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それにしても、仏題の"Les Fruits de la passion"(情熱の果実たち)といい『上海異人娼婦館』といい『チャイナドール』といい、これほど内容とミスマッチなタイトルも珍しいのではないでしょうか?題名だけ聞くと、ヨーロッパのエロチック映画みたいで萌え心をくすぐられますが、異国情緒あふれるゴージャスな館に金髪碧眼の美女たちがいっぱい出てくるわけでもなければ、ミステリアスな中国娘が登場するわけでもない。
でも出演キャストの豪華さは一見の価値あり。
まずは主演のクラウス・キンスキー。知る人ぞ知るドイツのカルト俳優であり、あのナスターシャ・キンスキーの実父。彼の出演作は物議を醸し出すようなものが多いのですが、本作でも大野美雪と烈しいベットシーンを演じて話題となったようです。
そしてステファン卿のもう一人の女、ナタリーにアリエル・ドンパール。この人、現在も現役の歌手や女優として活躍されております。この可憐で小悪魔的な美しさはスクリーンの中でピカ一の華やかさでした。ヒロイン役のイザベル・イリエよりきれいな体をしていると思いました。こんな変な映画(失礼)でこんな変なクラウスおじさん(さらに失礼!)の相手役をするのがちょっと勿体なかったような。クラウス同様、どういった経緯で寺山作品に出ることになったのでしょうか?
泣き虫顔のイザベル・イリエ、なんかあまり聞いたことのない女優さんだと思ってましたが「インモラル物語」などのお色気作品を中心に出演しているみたいですね。Rimbeauさん情報によると、寺山はO役にあのジェーン・バーキンを、と考えていたようですが、諸々の事情により実現出来なかったということ。ジェーンが演じると、余計痛々しいO像になって一層寺山のツボにハマったでしょうが、正直、この映画に出てなくてホッとしたような...。
日本勢では、池畑慎之介ことピーターや日本人モデルの先駆け、山口小夜子、寺山の秘蔵っ子、高橋ひとみなどこちらも話題性充分。でも、白いピー様を最初見た時、一瞬研ナオコさんかと私思ってしまいましたワ!山口さんのストイックなチャイナドレス姿、格好良かったです。
もっと前衛的でハチャメチャな作品なのかな?と観る前はちょっと畏れ慄いていたのですが、思ったほどまとまっていたと思います。でも、もうちょっと映像が耽美的であって欲しかった。

参考ページ キネマ旬報「上海異人娼館 チャイナ・ドール」
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by marikzio | 2008-01-01 12:47 | Movie | Comments(7)
Commented by Rimbeau at 2008-01-01 21:37 x
marikziO嬢さん、あけましておめでとうございます!!

あらら~!とうとう禁断の扉を開かれたのですね。
んで、marikzioさんの狂い初めが私の初笑いとなりました♪
ってのは、、、

>そしてオープニングに流れる寂寥感あふれる音楽が何とも貧乏くさい気分にさせてくれます。

ってところがドツボにはまりましたんですよ!

それにしてもテラヤマンにしてはあっさりめの出来でしたよね。
実験映像集のようなスゴい内容とドキドキしていたのに。

ちなみにナイス・バデーなアリエルさん
この後、クラウスの娘ナスターシャと共演されています。
っていうか、ちらりとすれ違うくらいの役ですが。

では、今年もよろすくお願いいたします!!
Commented by marikzio at 2008-01-02 12:49
りむべあうさん、すんねん・あけますて・おめでとうございます〜。
そう、謹賀新年にして禁断の扉を開けてしまったわたす...。
でも、このn'importe quoi! でRimbeauさんの初笑いをとってしまったなんで、春から縁起がいいです。
そう、この作品、寺山さんにしては感傷的な出来ですよね。カンヌにも出品されたんでしたっけ?

激動(?)の2007年でしたが、2008年もよろしくお願いします!
Commented by anche-io at 2008-01-03 00:34
marikzioさん、あけましておめでとうございます。
今年もいろいろとよろしくお願いいたしま〜す。m(_ _)m

いちおう、自称・アオモリスタな私ですが、実は寺山しゅうじ氏の知識はゼロに等しいのです。(名前の漢字も、何か見なければ書けないレベル) こんな作品作ってるんですね〜。

今からパリ旅行記、楽しみにしてます♪
Commented by Bill McCreary at 2008-01-03 01:55 x
marikzioさん、明けましておめでとうございます。まだ知り合って1月半にもいたりませんが、08年もよろしくお願いします。

>Rimbeauさん情報によると、寺山はO役にあのジェーン・バーキンを、と考えていたようですが、諸々の事情により実現出来なかったということ。
DVDに封入されている解説にありますね。製作のアナトール・ドーマン(「愛のコリーダ」とかも製作しています)がアイディアを出したのですが、「ジェーンはハードコアをしない」とかで(当たり前です)なかった話になったみたいです。実現する可能性は皆無だったでしょうが、もし彼女が出演していたら・・・。うーん、見るのがつらかったかな。

出来のいい映画とはぜんぜん思いませんが、寺山の耽美的側面はよく出ていたというところでしょうか。そういえば、山口小夜子も昨年亡くなってしまいましたね・・・。1月のパリ、寒いでしょうけど気をつけて!ジェーンにも逢えるかな?

余談:ブログを私も開設しました。よかったら遊びに来てください。でも、ブログってけっこう大変ですね。やってみてわかりました。
Commented by marikzio at 2008-01-03 22:10
anche-ioさん、こちらこそ明けましておめでとうございます。今年もどうぞ、ご贔屓に。
実は私も寺山さんのことはそれほどよく知らないんですよ。(^_^;
彼を見直すきっかけはRimbeauさんのブログでよく取り上げられるようになったからでしょうか?
せっかくなので、寺山氏の映画「ケチャップ皇帝」に使われていた曲"老人と子共のポルカ"をここで紹介しときます。

http://www.youtube.com/watch?v=j9C2axcAKI8

で、これは2007年に高田さんがカバーしたものですね。

http://www.sonymusicshop.jp/detail.asp?goods=MHCL000001220
Commented by marikzio at 2008-01-03 22:16
Bill McCreayさん、明けましておめでとうございます。
さすがにジェーンはあのオファーは受けなかったでしょうね。確かにファンとしては複雑なものがあります。
映画としてはあまり完成度が高いとは言えませんが、話題性や知名度ではこれが一番でしょうね。
ブログ、拝見させて頂きました。
まだ日が浅いのに、結構記事書かれてますね。丁寧に作られてると思います。これからも頑張ってください。



Commented by anche-io at 2008-01-05 02:21
>"老人と子共のポルカ"

あー! あの曲、そんなタイトルなんですか〜。今まで、♪助けて〜、ズビズバ〜♪という歌があるのは何となく知ってたのですが…。
すごい。ポルカってところが、まずすごい。
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