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『もじゃもじゃ頭のペーター』 ハインリヒ・ホフマン作

ブログ読者の皆様、ご無沙汰しておりました。
久々の投稿で登場するのは、なんと児童向け図書です。

この間、あるBS放送で旅番組を見ていたら、ドイツのフランクフルトにある街角で、奇妙な銅像があるのが紹介されていました。
メドゥーサみたいなもじゃもじゃ頭の少年や炎に包まれた女の子。
「この像は一体何なんだ?」と、地元の人に聞いて見ると、「それは"もじゃもじゃ頭のペーター"だ」と言います。
『もじゃもじゃ頭のペーター』とは、ドイツで書かれた児童向け絵本の中に出てくるキャラクターだったのです。

"Der Struwwelpeter" By Heinrich Hoffmann
『もじゃもじゃ頭のペーター』 ハインリヒ・ホフマン作_b0069502_20495488.jpg

作者のハインリヒ・ホフマン(1809-1894)の本業は精神科医。
自分の息子のために書いた本が出版されたのは1845年。それはたちまちのうちに大ベストセラーとなり大成功を収めました。
ドイツ人なら誰でも知ってる"もじゃもじゃペーター"。私はこの存在を初めて知ったのですが、世界各国で翻訳され、日本語版も出版されているそうです。

しかし、これに登場する物語はどれも奇妙でグロテスク。
例えば、お留守番を頼まれた女の子が両親の不在をいいことに、禁じられていた火遊びをして、焼死してしまうお話。
『もじゃもじゃ頭のペーター』 ハインリヒ・ホフマン作_b0069502_2104470.gif

にゃ にゃ にゃ にゃ、危ないにゃ
にゃ にゃ にゃ にゃ、たすけてよう

飼い猫たちがとめるのも聞かずに、マッチ遊びをした結果、女の子は火に包まれ、靴だけが残ったという結末。猫ちゃんたちが川ができるほど涙を流すというのが可愛いですね。
『もじゃもじゃ頭のペーター』 ハインリヒ・ホフマン作_b0069502_21132118.gif

これは、"指しゃぶり"をしないように何度も注意されていた少年が、仕立て屋の大きな鋏で指をちょん切られてしまうお話。いきなり自分の家に見知らぬ仕立て屋が飛び込んで来て、指を切るなんて、唐突過ぎるにもほどがあります。

要するに、この本は「言いつけをちゃんと守らないと、大変な目に遭いますよ」という脅し的な教訓本なのですね。
この他にも、悪戯ばっかりしている腕白坊やが、犬に悪さをしようとして噛まれてしまい、いつまで経っても怪我が治らないお話、スープ嫌いの男の子がスープを拒んでいるうちに、体がみるみる小さくなってしまい、5日後に死んでしまうお話。根拠なんて、ほとんどないようなお話ばっかりなんですが、中には「黒人を『インクみたいに真っ黒だ』とからかった3人の男の子たちが、"ニコラス様"に捕まって、インク壺に入れられ、黒インクのように真っ黒に染められてしまう」というエピソードは、人種差別はいけない、というメッセージが込められていて、なかなかいいと思いました。
ちなみに表題作になっている"もじゃもじゃペーター"は、髪も爪も切らず、風呂にも入らないで、こんな風貌になってしまった男の子のこと。不潔にしてると、こんなふうになっちゃうよ、というわけです。

「どんな内容なんだろ?」と思った方、中身を紹介しているページがありましたので、ここにリンクさせていただきます。

ドイツ語・英語 Struwwelpeter Heinrich Hoffmann

日本語 「もじゃもじゃペーター」

強烈な内容にもかかわらず、世代を超えて読み継がれている名作的存在の絵本。
フランクフルトには作者のホフマン記念館があって、週に1度チビッコ達が集まって、劇の練習をしていました。演目は燃える女の子のお話。このエピソードは人気絶大で、「私はこのお話が一番好き!」と目を輝かせて答える女の子もいました。
それにしても、ヨーロッパのお子様達って、なんでこの手のお話が好きなんでしょうか?
自分は子どもの頃、「イソップ物語」だけはどうしても好きになれませんでした。結末が暗くて残酷なものばっかりだったので、最初読んだ時は「何っ、これ!?」と衝撃を受けてしまいました。
しかし「イソップ物語」はお伽噺ではなく、子ども達に人生の試練や因果応報の原理を教える教訓物なんですよね。日本の民話や童謡も、よくよく考えれば結構怖いものもありますから、子ども向けの本や歌って、実は奥が深いんですね。
Commented by ○ん at 2007-07-02 22:25 x
こ、こわい・・・ちょっとトラウマになっちゃいそうではあるんですが、今この歳でみると、興味深いですねぇ。
ベストセラーってことは、やはり躾(?)に効果的だということなんでしょうか?!? 
Commented by marikzio at 2007-07-02 22:50
私が子どもの頃は「泣げば、山から、もっこ来るよ〜」という子守歌がありました。
"もっこ"というのが何者なのかわからなかったんですが、無条件に怖く、そしてどこかほのぼのとした気持ちになったのを覚えています。

「もじゃもじゃ〜」も、ヘタウマな絵がどこかユーモラスで、とぼけた語り口が親しみやすいみたいです。それに、子どもって残酷なお話が好きだし。もちろん、躾的にも効いてるみたいです。
by marikzio | 2007-07-02 21:27 | Book | Comments(2)

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