-PARIS, JE T'AIME-
2007年 05月 08日
女の子のサンクチュアリ、Parisを舞台に繰り広げられる18の愛の物語。
「Paris, Je T'aime」(パリ、愛してる!)
パリは世界中が愛して病まない夢の都。この街をテーマに18人の気鋭の映画作家達が描く5分間のドラマが詰まったオムニバス作品。
この監督達が淙々たる顔触れ。コーエン兄弟始め、ガス・ヴァンサント、ウェスクレイヴンなどのアメリカからのビッグネームに加え、「お、こんな人が!」という通受けする人まで、とにかく多彩で豪華。製作者が豪華なら、出演者なんて輪をかけてゴージャス。ナタリー・ポートマン、イライジャ・ウッドなどハリウッドでお馴染の面々に、ギャスパー・ウリエルやリュディヴィーヌ・サニエなどフランスの若手が応戦したかと思えば、ジーナ・ローランズみたいな大物が登場したりする。それに対抗して地元フランスではファニー・アルダンやジェラール・ドパルデューが円熟した演技を見せつけてくれます。あと、久々にジュリエット・ビノシュを見ました。
しかし、あってはならない事が...。
この映画にはリュディヴィーヌ・サニエも顏を出してるという前情報があったのですが、自分は彼女の登場シーンを最後まで見つけることができなかったのです。
おかしいなぁ。サニエたん、どこで登場してたっけ???長年連れ添った妻にうんざりしていた男の客室乗務員をしている愛人だったっけ?それともピガールの売春宿にいた下着姿のお姉さんだったのかも知れません。それにしても、なんともはや。あのサニエたんを見過ごすなんて鈍いにもほどがある。あ、やっぱ彼女は女優さんなので、役柄で別人みたいになっちゃうのかも!?
...なんて、あーでもない、こーでもないと考えていましたが、日本語公式サイトを見たら、全然憶えのないストーリーでした。「カットされてるじゃん!!!」
しかも、カットされてるエピソードはサニエたんの『17区 モンソー公園』の他に、『19区 お祭り広場』、『3区 デ・ザンファン・ルージュ地区』が割愛されていました。
んもう。せっかくカウンターでパリ地図もらってルンルンだったのにさ。同じ映画料金払ってるのにさ、完全版見てる人と見てない人が出て来るのって不公平だと思いませんか。許せない...。ああ、許せないわぁ。
これに脱力してしまったので、レビュー書く気も萎えちゃうところですが、印象に残ったお話もあるので、ここでいくつか紹介したいと思います。
『4区 マレ地区』
監督:ガス・ヴァン・サント。
ガス・ヴァン・サントにはちょっと期待しておりました。マレ地区はアートなギャラリーとかお店とか集まってるところだし、ゲイの町として有名ですね。
マレ地区にある印刷所に中年の英国人女性(マリアンヌ・フェイスフル!)と通訳のガスパール(ギャスパー・ウリエル)がやって来ます。タンクトップ姿のギャスパー君は印刷所で下働きをする若い男の子エリ(イライアス・マッコネル)に目を止めます。
「君を一目見てインスピレーションを感じた。僕らがここで出会ったことは宿命なのだ」といきなり熱弁をふるい始めるガスパール。その情熱的な語り口にもかかわらず、エリは終始キョトン。彼はガスパールの言葉がほとんど理解できなかったのです。ガスパールは立ち去り際に電話番号の書かれたメモをエリに渡します。
狐につままれたような面持ちでメモをじっと見つめるエリでしたが、彼の中に何かが閃き、広場に向かって駆け出すのです。ガスパールに電話をかけるために。
『10区 フォーブル・サン・ド二』
監督:トム・ティクヴァ
盲目のトマ(メルキオール・ベスロン)にかかってきた恋人フランシーヌ(ナタリー・ポートマン)からの電話。終末を暗示するかのような唐突な内容にトマは戸惑う。
女優志願のフランシーヌが台詞の稽古をしているところにトマが遭遇したのが二人の出会いのきっかけ。切迫したように金切り声を上げる彼女の声に目が見えない彼は大変なことが起こってると勘違いして、声をかけるのです。その後、フランシーヌはアメリカからパリに引っ越し、二人はいつも一緒。そして幸せだったり、喧嘩したりの時間が飛ぶように過ぎて行ったのです...。
フォーブル・サン・ド二界隈は移民が多くて雑然としたエリア。サン・ド二門が大きく映し出されたところでおおっと声を上げそうになりました。ここを通りかかった自分が名前もわからず写真に収めた門だったので、映画のロケに使われていたのにはちょっと感激。しかし、このあたりって、暗くなると通りに妖しいお姉様方が現れ始める危険区域なのだそうです。それとも知らず、無頓着にジグザクしてた私...。知らないってコワい。
最後にフランシーヌの別れの電話は新しい役のシュミレーションだったことがわかり、結局二人はめでたし、めでたし。
『20区 ペール・ラシェーズ墓地』
監督:ウェス・クレイヴン
結婚目前のイギリス人カップル、ウィリアムとフランシス。しかし、フランシスの希望で多くの著名人が眠るペール・ラシェーズ墓地を散策するも、二人の周りには不穏な空気が。
フランシスは気の利いたことを何一つ言えない未来の夫が堅物で退屈きまわりない男なのでは、と思い始めていたのです。
ようやく辿り着いた文豪オスカー・ワイルドの墓。墓石には世界中からやって来た訪問客の記念の刻印があって、フランシスも前人たちに倣って♥マークを印すのです。
そこでカップルは大喧嘩になり、ウィリアムを残しフランシスは立ち去ってしまいます。置き去りにされたウィリアム。彼の背後には、なんと文人ワイルドの幽霊が...。
それにしても、パリにオスカー・ワイルドのお墓があるなんて知りませんでした。今度パリに行った時は自分もワイルドのお墓参りをして、墓石に♥して来ようかなぁ。
それ以外にもヘジャブを纏ったアラブ系の女の子の話とか、ビノシュ演じる我が子を失ったばかりの母親とか、心に残ったエピソードを挙げたらキリがありません。地下鉄で観光客がボコボコにされるコーエン兄弟のネタは痛かったです。
しかし自分にとって、一番胸にキュンと来たのはコレだったかも。
『14区』
監督:アレクサンダー・ペイン
「うわ、まるで自分を見ているみたい」
一生懸命覚えた仏語で現地の人におすすめレストランを聞き出したりとか、自分はそこまで行ってないので、エラいなぁと感心してしまいました。
「故郷を離れて、自分は見知らぬ異国にただ一人でいる」というフレーズが胸に刺さりますね。「この町に住んでいる自分を想像して見た」というのにも激しく共感。キャロルは公園にやって来てベンチに佇む。そして、こう思っている自分に気づくのです。
「私はパリを愛している。そしてパリもまた私を愛していると思った」
これですよ、これ。まさに「パリ、ジュテーム」。
他の作品はパリを舞台にしてはいるけど、あくまでも登場人物主体。「パリ、愛してる!」というタイトルにあってないのでは?と感じてました。でも、このエピソードはちゃんとパリに対する愛が描かれてるんですよね。しかも、観光客という映画を見る人にとって一番身近な存在からの視点で描かれています。(観客の中には現地人もいると思うけど、私のようなエトランジェな立場が一番多いですよね)
私も初めてパリに来た時、肌で感じたもんです。「ワタシ、ひょっとして巴里に愛されてる!?」我ながらバカげたことを、と思ってたけど、感じることはどこの国も一緒なんだな、と嬉しくなりました。
画像元 日本語サイト「パリ、ジュテーム」
こんばんは。
私も先日(しかも最終日)この映画見に行きました。
4区、13区そして14区はとても印象に残りました。
特に、14区のおばさまの気持ちはわかりまよね。
私も全く同感です。
やはり、Parisは他の場所には無い
とても不思議な雰囲気があるところですね。
かなり余談ですが。。。。
バスティーユの長年連れ添った妻にうんざりしていた男が、
会社の個性的な上司ととてもそっくりで、びっくりしました。
パンフレットの載っている顔とか雰囲気は特にそっくり。
早速サントラを買ってしまいました。(もちろんFR盤!!)
この調子だとDVDも買ってしまいそうです。
このおばさま、ほんと味がありますよね~。
13区はチャイナタウンのお話ですよね。これもインパクトありました。
setuwoさんの上司さんにそっくりというのも笑えますね。その方も同じ悩みを抱えてたりして...。でも、彼は結局うんざりしている妻に最後まで添い遂げるんですよね。
ロケ地をまわるツアーも面白いかも。これで、またパリに行く楽しみができましたね。