『ライン・オブ・ビューティー 愛と欲望の境界線』
狂乱の80年代。サッチャー政権全盛期のイギリス。
議員の家庭に居候することになった青年が目にした英国上流社会の享楽的でカオスな日々。
ブッカー賞を受賞した文芸作品を原作にBBCがテレビシリーズとして製作。脚本は「ブリジッド・ジョーンズの日記」を手がけたアンドリュー・デイヴィス。
2月11日にWOWOWで全3話を一挙放映されました。録画して後日ゆっくり見ようと思ってたのに、思いのほか面白くて、結局リアルタイムで見てしまいました。
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このドラマの魅力は、何と言っても映像美。昔好きだったイギリス映画特有の気品が溢れていて素敵です。そして主人公のちょっと奔放なセクシュアル・ライフが描かれているところでしょうか。この青年はホモ・セクシュアルで、自分の性向をカミング・アウトしている設定なのです。

b0069502_20472357.jpgオックス・フォード大学の学生、ニック(ダン・スティーヴンス)は友人トビーの家に居候することになります。
トビーは保守党のジェラルド・フェデン議員の息子で、ロンドンのノッティング・ヒルにあるすごい豪邸に住んでいました。フェデン家は4人家族で、ニックは最初、ベテラン家政婦のエレナをフェデン夫人と勘違いして挨拶してしまいます。
ディナーの席で、ニックはフェデン夫妻はエレナを伴いヴァカンスに、トビーは海外出張のため、不在になることを告げられ、いきなりトビーの妹のキャスリンと留守番をすることになります。キャスリンは実は心に問題を抱えていて、精神安定剤を飲んでいるのです。
この何とも言えない展開に戸惑う私。いくら親友だからと言って、赤の他人を自宅に住まわせるのも、かなり不自然なのに、ヴァカンスの間、自分の娘と二人っきりにする感覚が馴染めません。いくらニックがゲイだからと言って、一つ屋根の下に年頃の男女が一緒って...。しかも、キャスリンは爆弾を抱えてるんでしょ?呑気に夫婦旅行なんかしてる場合なのでしょうか???
このドラマは他にも飛躍しているような部分が随所に見受けられます。例えば、ロンドン郊外の親戚の家にニックを連れて行って、そこのお屋敷には政界で重要な人々がわんさか集まってパーティなんかが催されちゃったりするわけです。で、ニック君も連れて来られたからには、その会合に出席してたりする。身内でも何でもないのに、そんなトコに居ていいんでしょうか。ま、ニックはオックスフォード大に通ってるし、中産階級者なんだから、別にその場にそぐわないわけではないんですけどね。
そして、海外で仕事をするトビーと入れ替わるようにニックはフェデン家の一員として、数年間を過ごすことになります。
この家って、どこかズレていると私は思うのですが。

好奇心旺盛なキャスリンはニックの性生活に興味津々。自分の兄に欲望を感じるか、とか、もしかして寝たのか、とかかなりストレートな質問をぶつけて来るのです。
それに対して、これはプライバシーな話題だ、と怒りもあらわに諌めるニック。実はトビーのキュートな"キュ"(お尻)に見とれたりもしているのですが。
「最近はどうなの?」とキャスリンの追及に、「ここのところはサッパリ...」と打ち明けるニック。
「そんなの勿体ないわ」
「僕もそう思う。」
「じゃ、何とかしなくちゃね!」
ある日、キャスリンは新聞の恋人募集広告の中から、一人の男性を見つけます。
「20代後半、黒人。ルックス非常に良し。これがいいんじゃない?」
え〜、マジ!?だって、ニックは白人だし、エリート学生なんですよ!違う人種で労働者階級風の人とは合うはずがない、と自分は思ったのですが、ニックはマンザラでもない様子。後で知ったのですが、どーやら、それが彼の好みだったようです...。
その個人広告の男性はレオ。二人はパブで落ち合い、閉店まで過ごしますが、その後、どこへ行こうか?という話になります。
「君の家がいい」と希望するニックに対して、レオは「母親と同居しているから」と退けます。おいおい、会ったばかりなのに、いきなり部屋に行こうなんて、何をしようと言うんでしょう?キケン過ぎます。(笑)
で、ニックはフェデン家が所有している庭園に行こうと提案。真夜中にオトコ二人がお庭に行くなんて、ニックお坊っちゃまって大胆!しかも、友人の家の所有地で野外プレイ...。(赤面)

場面は変わって、セレブ一家に混じって、大邸宅でパーティに出席するのですが、そのパーティにはお金持ちの御子息、御令嬢もいっぱい来てました。その中で一際注目を浴びる一組のカップル。ワニー・オラジとそのフィアンセ。ワニーは億万長者。大富豪は結婚を決意したというだけで、いろんな意味で話題を独占してしまうものなのです。
そんな中で、ホモ仲間から「ほら、いい男がいるぜ」と一人のボーイの存在を教えてもらったニック。黒人青年レオと関係をもったばかりなのに、その色男に、ニックはすーっと近づいて行って、いとも簡単にランデブーを獲得。「午前3時、玄関先で」
しかし、ニックはその逢引を実現することはできませんでした。不覚にもソファでうたた寝したまま朝を迎えてしまったのです。婚約したばかりのワニーの隣に座り、ワニーが「マリファナを取りに行って来る」と言った所までは起きていたのに...。

ロンドンに帰り、レオと再会するニック。再び愛を確かめ合い、初めて二人で朝を迎えたと言うのに、レオはいきなりニックに別れを切り出したのです。骨董商をしている元恋人の体調が思わしくなく、放っておけないと思うようになったらしい。
「君は綺麗だから大丈夫。すぐに相手が見つかるよ」
あっけない恋の結末。最初、一話完結のオムニバス形式のシリーズだと勘違いしていたので、この話って、一体何なの???と思ってしまいました。
でも、ちゃんと続きがあったのです。
3年後、ニックの新しい恋人はなんとワニー。骨董品に目が利くニックはワニーと雑誌の創刊や映画制作のための活動を始めます。ニックはワニーを連れて、男性だけのスポットに出かけたり、そこで出会った男性を交えて、コカイン・パーティをしたりしますが、ワニーは同性愛者であることをひた隠しにします。ゲイであることが知れたら、自分は上流社会で生きて行くことができない。結婚だってカモフラージュのためだったのです。

劇中、頻繁にお偉い議員さんたちの口に上るのがマーガレット・サッチャーの名前。当時、彼女の力は絶大なもので、政治家たちはこぞって彼女に取り入ろうとしています。サッチャー女史がついに登場し、ニックがダンスに誘う場面まで出て来て笑えます。
退廃した特権社会を冷静に見つめる主人公の視線がいいです。かと言って決して聖人君子というわけでなく、好みの男性に熱い視線を送ったり、コカインに陶酔したり、快楽と現実の狭間で苦悩したりする。主演のダン・スティーヴンスが複雑かつ人間味あふれる人物を魅力的に演じていると思います。「女は一生愛さない」の名台詞で知られる『アナザー・カントリー』や『モーリス』に登場するような英国式美青年の伝統を受け継ぐ高貴なお顔だち。"ヒュー様"と呼ばれていた頃のヒュー・グラント系統の顔だ、と思ったのは私だけでしょうか?

このドラマのもう一人の主人公はヘイリー・アトウェル演じるキャスリンでしょう。自分に無関心な両親に反発する攻撃性を持っている反面、何度も手首を切るほど情緒不安定。彼女だけが非常にシビアに物事を見ていて、まっとうな意見を言ってるのに、父親は相手にしてないんですね。私が冒頭で感じた漠然とした違和感は、歪んだ家庭像を暗示していたのですね。そのひずみが最後に取り返しのつかない方向へ向けられ、一気に家庭崩壊へと突き進んで行きます。
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デュラン・デュランやスパンダー・バレエなど、80年代にヒットした英米ポップスがたくさん流れるのも見所の一つ。当時はまだ治療薬がなかったエイズ問題も出て来ます。
長編小説をたった3時間程度のドラマにまとめてあるので、かなり端よっているのでしょうか、構成として無理があるというか不自然な部分が目につきました。でも、次はどうなるんだろう?というドキドキ感があって最後まで惹きつけられました。完璧ではないけれど、味のある脚本だと思います。いかにもハリウッド的な出来すぎハッピーエンドとは対極の、ちょっと後味の悪い皮肉な結末がとてもイギリス的。
「ニックは一気に何もかも失っちゃってどうするんだろう?」というモヤモヤ感は残るんですが、彼ならきっと大丈夫!そんな風に思わせてくれるドラマでした。

WOWOWオンライン 「ライン・オブ・ザ・ビューティー」
BBC Drama The Line Of The Beauty
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by marikzio | 2007-02-15 21:34 | Television | Comments(0)
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