オフブロードウェイ・ミュージカル "STOMP"
2006年 09月 13日
デッキブラシやドラム缶などのガラクタを楽器がわりに繰り広げる奇想天外なShow。日本でも 来日公演 を果たしているので、知ってる人も多いと思います。
画像元 STOMP
"STOMP"が上演されるのはイースト・ヴィレッジにあるオルフェウム劇場。
アスタープレイス駅を降りると、この"アラモ"という、奇妙な巨大オブジェがお出迎え。これは押して回転させることもできるそうです。
この"アラモ"のすぐ近くに、"BLUE MAN"のアスター・プレイス劇場がありますが、オルウェム劇場は駅から歩いて10分くらい。この界隈はNY大学も近いので、イースト・ヴィレッジは学生の街、というところでしょうか?
30分くらい前にオルウェムに到着すると、すでに、開演待ちのお客さんたちが行列を作っていました。会場内に通されたのは開始予定の20分くらい前でしょうか?
私のチケットは前から2列目だったのですが、最前列には黒人の家族(6人くらいいた)が陣取りました。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さんとお母さん、子ども達までお揃いで、みんなスーツやワンピースなど最上級にお洒落している。カジュアルなショーなのに今時珍しいな。その他の前方の席は、いかにも観光客な人々であっという間に埋まりました。ちなみに私の隣に座ったのは日本人女性。関西弁らしき言葉で友達と喋っておりました。
雑然とした会場内はガラクタオブジェでいっぱい。
ステージも大きなドラム缶とか、ごみバケツとかそんなのばっかりで楽器と呼べるようなものはほとんどありません。
結構待たせるな〜と思っていたら、ようやく一人の黒人男性がデッキブラシを持って登場。会場は彼の登場に拍手。
その男性、「うぉっ」と掛け声を挙げながら、デッキブラシでステージを叩き、リズムを取ります。舞い上がる埃。その後、次々と男女が登場して、同じような声を挙げながらステージを叩く、埃を飛ばす、客席にわざとゴミを落す....。
「"STOMP"の最前列はゴミや埃がかかるので注意」というのをネットで読んだことがありますが、コレだったのか。最前列の黒人家族、せっかくお洒落して来たのにこれじゃ台無し。デッキブラシの固い部分が割れて、飛び散ったり。これは演る方も観る方も大変だわ。
それにしても、単にみんなで床を叩いているだけなのに、微妙に違うリズムで叩いている人もいて、音に広がりを出しています。そして一糸乱れぬタイミング。キャストは10人前後いたと思うけれど、演奏時間も結構長いし、これだけの人数でそれをやるのはかなりのリズム感と体力を要すると思います。
デッキブラシのあとは、メンバーが何人か残ってマッチ箱パーカッション。
日本のブツよりやや大きめなんですが、それを指で叩いてリズムを生み出す。一人ずつ叩いたり、皆で合わせたり。これがまた難しそうです。自分だったら指がつってしまいそうです。同じような芸でZippos編。これも点火する時の音が楽器となり、連打する指さばき、他のメンバーとのタイミング合わせなど、かなり緻密なスキルです。
こういう小物系の音響はどうしてるんだろう?と思っていたら、ステージの中央にマイクがあって、これで音を拾っているみたいでした。
"STOMP"は一言の台詞もないので、言葉のハンディはありません。しかし、ジェスチュアーや表情で客席に合いの手や拍手を求めたり、タイミングが悪いと首をすくめたりなどの掛け合いの場面が多いです。非言語的なコミュニケーション能力が秀でてないと、観客を引き寄せ続けることができない。メンバーの中には道化的役割のキャラクターもいて、突然壁にぶつかるなど体当たりパフォーマンスまであり、子ども達は大喜び。
実はキャストの中で日本人らしき女性の姿があって、ショーの間、ずっと気になっていました。あとで、ネットを調べてみたら、その人は宮本やこさん、という方だそうです。
宮本 やこ
8歳で和太鼓に出会い、その2年後にはニュージーランド親善大使として、演奏をする。慶応大学理工学部在学中にダンス・サークルのメンバーとなって、多くのミュージカルに出演しながらタップ・ダンスに出会う。'98年に渡米し、ニューヨーク大学のミュージカル科で学ぶ。和太鼓グループ「鼓舞」を立ち上げ、代表、演者としてアメリカで活動。
'02年に"STOMP"初の日本人メンバーとして正規採用され、現在も活躍中。
画像元・参考ページ
宮本 やこ インタビュー
ご本人のサイト
YAKOの部屋
私は何の予備知識もなしに、彼女の生パフォーマンスを観たのですが、とても美しい方で見とれてしまいました。リズム感もダンスも素晴らしく、外人ダンサーと並んでも全然ひけをとらない。かなり目立っていましたよ。
ショーの中で一番圧巻だったのが、スキー靴にドラム缶をくっつけたものの上にのって、床を叩くパフォーマンス。さすがに、これは男性だけでしたが、大きくて重量もあるドラム缶を"履いて"、ガッシャーン、ガッシャーン、ガッシャーンと歩く姿はすごい迫力でした。これはショーの中でもハイライトだと思います。
ここのページで、そのパフォーマンスのビデオ・クリップを見ることができます。
video & audio clips
メンバーの中でリーダー格と思われる黒人ダンサー。一番前に座っていた黒人ファミリーのお父さんが大絶賛して、彼と何度か握手していました。ひょっとして身内なのかなぁ。家族総動員で最前列に陣取ってる、ってことは出演者に招待されて来たのでしょうか?
それとも、同じ"ブラザー"として「素晴らしい!」と敬意を表して握手を求めたのかも知れません。いずれにせよ、ダイナミックなショーでした。
定規や指で机を叩く、足をゆすってリズムをとる。これって誰もが無意識にやっていることですよね。新聞を読みながら鉛筆で歯を叩く行為も立派な芸として成立させてしまう。タップダンスやアクロバットな動きを取り入れながら、想像を絶するほど大胆に、一流のエンターティメントに昇華させてしまうパワーはやっぱり本場。
これぞ、NYC!