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「竹内玲子の これでもかニューヨーク」   竹内 玲子

いつかは、このブログで紹介しようと思っていた、竹内玲子さん。最新刊が9月末に出たということで、ついに登場です。

これまでに、彼女の著書「笑うニューヨーク」シリーズを3冊読んで来ました。
NY在住16年、という彼女が「大都会ニューヨークには、この世の物とは思えないぐらい変な人たちがいっぱいいて、毎日のように想定外な事件が私の周りに起こっている」という日常を描いた爆笑エッセイ。あの、世界の経済の中心ニューヨークに住んでいる人の書いた本、と言うと、いかにもカッコよくて「私はデキル女。命がけで頑張ってるのよ。」みたいな事を書いているようなイメージがあるけれど、竹内さんのキャラクターは"お隣のお姉さん"的で「ありそうでなかったタイプ」の本ではないでしょうか。
一見おちゃらけたような文章だけど、豊富なボキャブラリー。人間ウォッチングが鋭く、コミカルな描写や突っ込み、自虐的な自己分析に、ついつい笑わされてしまいます。どうやら彼女は関西出身らしくて、笑いをとるのが上手。こういうセンスは自分にはないので、その才能がうらやましいです。
ニューヨークを描いた「SEX AND THE CITY」も生のニューヨークの人間模様を赤裸々に描いた傑作ドラマだけど、日本人にとっては、この「笑うニューヨーク」の方が実は"ライブなNY"を味わえるのかも知れません。

さて、本作の「これでもか ニューヨーク」。
爆笑エッセイ&NYガイド、と言うことで前作シリーズとスタンス的にはほぼ同じ。
「笑う〜」は講談社で文庫本だったけど、「これでもか〜」は徳間書店で新刊本で、ややゴージャス。何が豪華になったかと言うと、彼女の写真が大幅に増えたということ。
前シリーズの1作目に彼女の写真はなく(髪で顔が隠れている姿らしきものはあった)、2作目は友人と愛犬と一緒に小さく写っている写真があり、3作目でようやく顔がはっきりわかるようなのが2枚出てきました。友人の写真はバンバン掲載されてるんですけどね。(いいのかなぁ〜、と心配になったりしました)
しかし、最新刊「これでもか〜」にはチャーミングな竹内さん本人の写真がいっぱい。ヘアメークもバッチリ。本の中の記事を書くにあたって、カメラマンやメイクさんが同行したそうで(友人なんだろうけど)、扱いがグレードアップしたように感じました。中にはアイメイクに力が入り過ぎて、「明らかに目が大きすぎ」と感じるものもあったけど。

肝心の中身については、自分のことを"リンコ"(学生時代のニックネームだったらしい)という3人称で呼ぶのをやめ、"私"に変わっている。3部作では友人たちが頻繁に顔を出し、内輪ネタっぽかったものが、今回はほとんど姿を消している。自分の回想録みたいな内容だったのが、今回は取材を申し込んで記事にしている、という変化がありますが、基本的に彼女の書くミーハーな世界って変わりませんね。いい意味でも悪い意味でも。
消防士ポールさんとお友達になったのをきっかけに、一般人が出入りできないはずの消防署に案内してもらった体験が第1章で出てくるのですが、「ばかばかしくて面白くてくだらないけどすごく役立つ」というキャッチフレーズと合わないような気がしました。一応ガイドも兼ねた本、と銘打っているのに、一般人はおろか観光客が足を踏み入れることのない、消防署のお話。エピソードとして読むぶんには楽しめましたけど。
第2章は、アッパー・イーストサイドにある老舗の本屋や薬局にいる"頑固なじいさん巡りツアー"。彼女お得意の人間おちょくり描写が冴えて笑えました。人形病院は怖かったです。
日本に帰国した時に偶然、ぺ・ヨンジュンのCMを見て、ヨン様に惚れ込んでしまい、「ヨン様は英語が堪能で頻繁にNYに来ているらしい」という話を聞き、早々とNYに舞い戻り、コリアンタウンでヨン様探しをする「ヨン様訪ねて3千里」。日本で大人気のヨン様は30過ぎ、ということで韓国ではすでに過去の人となりつつある、という事実に衝撃を受けた、というエピソードが何か感慨深いものを感じさせられました。
竹内さんに同行していた、カメラマンのトロイが、ヨン様の写真集を紹介したHPを見て、「何て素晴らしい体をしてるんだ。それに彼の唇といったらセクシーだ。」と言ったり、「このドラマでは彼が裸になって、あの素晴らしい体を見せているのか?」と聞いてきたり、韓国で人気上昇中の若手俳優のポスターを見て「オー・キュート」とつぶやいたりしているところも大爆笑でした。
「英語に通じていて、NYに頻繁に来る」というのはヨン様自身ではなく、「冬ソナ」の主人公の設定だった、ということがわかってガクーッと膝をついた、というオチが最後についてあるのも流石です。

パーソンズ美術大学を卒業し、グラフィック・デザイナーとして活躍して来た竹内さん。最近は雑誌やWebでもエッセイを書いて活動の場を広げているようです。
彼女の独特の文体、実は賛美両論なんですよね。
「ブログやHPとしてはいいけれど、出版物としては幼い」という辛口な意見もあるのですが、この勢いだと、彼女はこれからも書いて行くのではないでしょうか?
それにしても、いいな、いいな、ニューヨーク。
パリも好きだけど、気の多い私はNYにも憧れます。「パリかNYのどちらかに住んでもいい」と言われたら、即答できそうにありません。
自分は「刺し身や寿司がないと生きていけない」タイプではないので、海外で永く住んでいる人がうらやましいです。

竹内さんの連載エッセイがここで読めます。
私は彼女が気の毒だけど、ブラインド・デートのエピソードで大笑いさせていただきました。
NYフードについての話題もあるので、NY旅行の参考にもなりますよ。
marie fields 『ニューヨーク 美味しい物語』
by marikzio | 2005-10-27 18:04 | Book | Comments(0)

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