J L MURAT "MOKBA/MOSCOU"
2005年 06月 15日
これはYTTツシマさんのレビューによると、三部作、「モスクワ」(本作CD)、「1829」(CD)、「1451」(ミュラ作の千行詞。CD、自筆イラスト付き詩集本、DVDの3種でリリース)のうちの第1巻なのだそうです。
私がミュラの存在を知ったのはミレーヌ・ファルメールとデュエットしている"Regrets"(後悔)を聴いた時。最初は『普通のメランコリックなラブソング』だと思ったのに、ミュラの声がからんできた途端、いきなりその曲の世界がわーっと広がったように感じて、「なんて魅力的な声なんだろう!」とびっくりしたものです。
あの仏頂面(失礼)からは想像もできないような官能的なボーカル。頭の片隅でずっと気になっていたものの、CDを手にする機会がなかったのですが、ようやく本作でミュラの世界に触れることができました。
タイトルからして"ロシア"をテーマにしたものには違いないのでしょうが、アルバム全体にはあまり異国っぽい匂いはありません。メロディーは甘美で気だるく、何やら政治犯のようなジャケ写とは不似合いな内容です。
私は1曲目の"LA FILLE DU CAPITAINE"から2曲目の"FOULARD ROUGE"、そして3曲目の"OH MY LOVE"までの流れが特に好きです。ミュラは声もいいけど、良い曲も書くんだなぁ、と納得させられる瞬間。
中盤の"NIXON"はスピード感があってメランコリックな楽曲が多い中でスパイス的役割を果たしていると思います。
時々顔を出すコーラスの女性の声がすごくいいなぁ、と思いました。ハスキーな歌声はもちろん、お喋りや笑い声がなんとも言えずコケティッシュ。なんと実は元スーパー・モデルで、2002年に歌手デビューもしているCarla Bruniだったんですね。
カーラ姉さんは5曲目の"Ce que tu desires"(君の望むもの)でミュラとデュエットしています。
そして、ミュラは11曲目の"L'AMOUR ET LES ETATS-UNIS"(愛とアメリカ)で、もう一人の女性ボーカリストとコラボレーションしています。
共に歌うのはCamille。
私は彼女の声を聞くのは初めてだったんですが、ハスキー・ボイスでやや投げやりな感じの歌い方がチャーミングな人だと思います。
"WINTER"。
うねるようなベースがかっこいいロックっぽい曲。この中身の詰まった濃いアルバムの最後を飾るのに、なかなか良い感じと思いきや隠しトラックがありました。
ミュラ作の千行詞の一部を朗読し、バックには鳥の声や赤ん坊の声に似せたような合成音?が流れます。これはなくても良かったのでわ?という気がします。しかも26分49秒とムダに長い...。それだからこそ、隠しトラックなのかも知れませんが。
しかしながら、作品全体としては、とても高品質なポップスに仕上がったと思います。
公式サイト J L Murat.com