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「ティファニーで子育てを」 E.マクローリン&N.クラウス  小林令子訳

ニューヨークの超高級アパートの豪華なエレベーターの中で、緊張して佇む女子大生のナニー。子守のアルバイトをするために、母親と面接する場面でこの物語が始まります。
ニューヨーク大学で児童発育学を専攻する彼女はフランス語が堪能で、ベビーシッターの経験も豊富。少しばかりの自信と戦慄きを抱いて、マネー・エリート(超大金持ち)、ミスターXの家庭の門を叩きます。

ミセスXは初め一週間に12時間の条件で彼女を採用しますが、初めに手渡したスケジュール表には予定がびっしり。
幼稚園へ迎えに行ったあとは、音楽教室やスイミングスクールなど毎日違うお稽古事に付添い、通院や連れて行くべき美術館のリストなど、事細かに指定され、そのうえ子守には関係のない買い物まで命令されるのでした。
ナニーが採用される前はケイトリンという女性がグレイヤーの面倒を見ていましたが、彼女はクビにされ、そのために自分がここへ来ることになったことを後に知ることになります。

それにしても、ベビーシッターって、こんなに忙しいものなんでしょうか?私は単純に両親が仕事や外出する間、家で子どもと一緒にお留守番するものだとばかり思っていたのですが、この小説の中での子守さんたちは、あらゆる場所や集会に出かけ、博物館に連れて行ったり、外国語を教えるなど、家庭教師のような役割まで背負わされています。
その一方、奥様は仕事をしているわけでもなく、自分の書斎に閉じこもったり、午後はどこかへ外出している毎日。これって、最初から子守なんて必要ないんじゃないの???

ミセスXは平日パートだったはずのナニーに週末家族旅行の同行を要求したり、泊まりがけでグレイヤーの世話をさせるなど、次第に拘束時間が長引いて行きます。
大学の論文書きなどのため、長時間勤務を希望していなかったナニーにとって、これは予想外の展開で、学生生活に支障を来してくる有り様。
しかしミセスXのアブノーマルな要求はエスカレートする一方であり、振り回され、追いつめられていくナニーとの確執がこの物語の最大の見せ場と言っていいかも知れません。

しかし、一番の被害者は4歳児のグレイヤー君でしょう。母親から愛情を遮断され、母親がわりとなるベビーシッターも次々と交代させられる、哀れなこの少年がどんなふうに成長していくのか、と考えると胸が痛みます。
慕っていたケイトリンが姿を消し、傷ついた彼が反発しながらも、ナニーと心を通わせていく描写はとてもいじらしい。
彼のような幼少期を送ったアメリカ人は結構多いのかも知れません。

この本の著者である、二人の女性はニューヨーク大学で教育学を専攻し、都合8年間に渡り、マンハッタンの30のマネー・エリートの家庭で子守(ナニー)のアルバイトをして来た、という元スーパー・ベビーシッター。この経験をもとにし書かれたというこの本はニューヨーク社交界の大きな話題となり、モデル探しが行われた、とも言われています。
この本の中で一番笑えるエピソードと言えば、元ストリッパーだった奥様の家に行った時、その薬づけのイカレたママが半裸で邸宅中を大暴れするシーン。これにも実在のモデルがいたのでしょうか?
続編も決定しているとか、映画化の話もあったと聞きますが、その後どうなったのかはわかりません。

原題は「The Nanny Diaries」。
そして解説は中村うさぎ。
by marikzio | 2005-05-19 22:49 | Book | Comments(0)

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