『世界最速でアミーゴができる!スペイン語入門―柔らかくて毛深いスペイン語の本』 ブルーシャ西村
2010年 05月 17日
日本における第2外国語として、まだ馴染みの薄いスペイン語。しかし、世界におけるスペイン語圏はかなり広範囲を占めていて、「スペイン語が話せるって、実はかなり美味しいわよ~。アミーゴって、ほんとにオープンで人懐こい奴らばっかりだから、世界変わるわよ~」とばかりに、スペインとスペイン語の魅力をこれでもかっ、とばかりにてんこ盛りにした1冊なのです。
「おフランス命(?)のはずのmarikzioが、なんでいきなりスペイン語なのか?」と不思議に思われる方も多いと思います。ほんとに。
自分にとって、スペイン語に触れることと言えば、ペドロ・アルモドバルの映画を観る時とか、ペネロペ・クルスはスペイン美女だよなー、とかイタリアの歌手、Tiziano Ferro のスペイン語バージョンを聴く時ぐらいか。
母に「アンタって、何でいつもマイペースというか時間にルーズなのっ?」と言われて、「そう、私、前世がスペイン人かも知れない」とマヌケなことを口走ったことがあります。
あっ、Tiziのスペイン語バージョンと言えば、彼の母国語イタリア語バージョンの方が自然体で響きが美しいのは当然なのですが、スペイン語となると、これがちょっと力強くなって、少しねちっこくなって、何とも卑猥な感じになるなーと思ってました。でも、気のせいだろ、と考えてたんですが、miharuさん曰く、「イタリア語は女性が話すとかっこいい言語、スペイン語は男の人が喋るとかっこいい言語なんですよ」ということだったので、Tiziのスペイン語がいやらしい、いや魅力的に聞こえるのにはちゃんと理由があったんだーと納得したわけです。
大学時代の第2外国語として選択したドイツ語を途中で講義を受けるのをやめ、何年も経ってから、パリ旅行したのをきっかけに無性にフランス語をやりたくなって、文法書と辞書を買い全くの独学でフランス語をスタートさせ、何度も仏検2級を受けては落ちる、を繰り返している私。語学マニアじゃないけど、他の言語に全然興味がないわけじゃない。じゃあ、他にもう一つ、としたら何語がいいかなぁ?
じ、実はTiziano Ferroの影響で、イタリア語の文法書を買ってみたことはあるのですが、amazonから家に届いたその日に開いてみたっきり、再び紐解かれることなく、押し入れの中で眠り続けているイタリア語文法書。
「イタリア語を勉強するくらいなら、スペイン語よね。だって、イタリア語はイタリアしか通じないのよ」と言う人がいて、なるほどな、と思った。(イタリア語学習者の方、ごめんなさい)
ううむ、フランス語とスペイン語が話せるようになったら、英語だけペラペラの人より強いかも知れない(それはさすがにナイ)と、自分の能力をはるかに超えたことを妄想しつつも、やはり手が出せないでいました。
何故なら、フランス語を始めとするラテン系言語は英語と違い主語の種類によって動詞の活用形が何パターンも変化するので、それを理解し慣れるのに、それはそれはそれは苦しい思いをしたからです。もちろん、その苦行も、未知の世界を切り開くことに繋がる登山のようなもので楽しくもあったのですが、再び、それを一から始めたいとはさすがに思えなかったのです。
ところが、その垣根をバーン!と取り払って、「スペイン語は“私”(Yo)と“君”(T'u)だけでも、ちゃんと通用しますよ。まずはそこから始めましょ。」と超初心者を優しく導いてくれてるのがこの本なのです。
この本に登場するのは、観光客として、バルセロナにやって来た日本人女子大生ERIとマヨルカ島出身のスペイン人、PEDRO。この二人が街で出会い、一緒にご飯を食べながら、仲良しになって行くというストーリー。舞台にはカフェや地元レストラン、市場などが次々現れ、臨場感たっぷり。
初心者向け教則本にありがちな紋切り型のフレーズや短調な会話文と違い、本文は中級者レベルでは?と思うようなフレーズが続出でなかなか手強いです。語学のテキストに出てくる表現って、実は現地ではあまり一般的に使われていないものがあって、ネイティブにとってはどこかちぐはぐな場合もあるのですが、この本にあるフレーズはどれも現地で使われている、実用的なものばかり。著者のスペイン人のお友達にもちゃんとチェック入れてもらってるので、その点はお墨付きなのだそうです。
私がこの本を手にしようと思った点は、
1 "柔らかくて毛深い"と言うフレーズに惹かれた。
2 複雑な文法のハードルを下げて、誰でも気軽にスペイン語の世界に入れそうだった。
3 スペインに関するコラムやエピソードなど読み物がたくさん。
4 今までありそうでなかった正統派のスペイン語(カステリャーノ)の教本である。日本で出版されているスペイン語関連の本は実は、南米のスペイン語がほとんどなのだそうです。
5 会話の中身がリアルで濃い。
6 何てったって、「世界最速でアミーゴができる!」から!
この本を開いてみて、自分が最初、戸惑った点は「ほんとに私”(Yo)と“君”(T'u)だけでいいの?」ということでした。だって、年上の人とか、そんなに親しくない人に対して"君"って、失礼じゃないの?フランス語だったら、まずは"vous"(あなた)で、"tu"(君)は、ある程度親しくなって、「そろそろ"tutoyait"しませんか」と呼びかけがあってから、使われるものなのに。
...と思ったら、スペイン語では、"usted"は医者や習い事の先生に対して使われる二人称で、それ以外はみんな、"T'u"で呼ばれる、と書いてあり、さすがスペイン人はここからして大らかさが違う、と驚かされました。
この書籍のもう一つの目玉が、付属CD。正統派カステリャーノの教本であるからには、南米系スペイン語でもなく、地方の訛ったスペイン語でもなく、都会育ちで混じり気なしのきれいなカステリャーノを話す人でなくてはなりません。在日でそんな人はとても希有な存在。そもそも、そんな人がいるのか?という状況の中で奇跡的に現れたのが、NHKラジオ「まいにちスペイン語」に出演していたアルベルト酒井さん。そして、ERI役に著者ご本人であるブルーシャさん、という組み合わせで録音が実現されました。スペイン語学習者の間では、アルベルト酒井さんは「おお!」という存在らしく、この録音はほんとに凄いことみたいです。
初めて耳にするアルベルトさんのカステリャーノ、想像してたよりフラットというか声の抑揚が少ない気がしました。何と言いましょうか、とっても上品で紳士的。自分が勝手に抱いていた「卑猥に聞こえるスペイン語」のイメージとは違います。クイーンズ・イングリッシュのスペイン語版と言うのかな。相手役のブルーシャさんの声は、ほんわかして親しみやすい声だと思いました。二人ともゆっくりめで、初心者が聴きやすいように話してますね。
ERIがPEDRO宅に招待され、彼の友人達に会い乾杯するところで、この本は終わっています。ひょっとして、この続きがあるのでしょうか?次作の企画もすでにあるようですし。
次回作が楽しみですね♪
(おい、amigoはいいのか?)
Bruxia Nishimura's Website
ブルーシャ西村 Official Blog
>スペイン語となると、これがちょっと力強くなって、少しねちっこくなって、何とも卑猥な感じになるなーと思ってました。
私も同感
力こもってますよね!
さてイタリア語の魅力は
TIZIの母国語だから(笑)が5割。
あとはレオ様ベル様(西洋美術の巨匠)がイタリア人だからですね♪
Tiziは歌だけでなく、インタビューでもスペ語で喋ってましたね!
個人的にはスペイン語よりイタリア語の方が美しいと思いますが、スペイン語みたいに広まらなかったのが残念ですね。植民地の関係なんですけど...。
イタリアもスペインも芸術大国ですよね♪